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「なにするんですか…離して下さい」

抵抗しようともがくが、全くびくともしない。
彼のいい香りに包まれて、次第に抵抗を忘れそのまま彼に身体を預けた。

無言の敦賀さん。
腕の力は弱まることなく、心地良い感覚と温かさを感じる。
その温かさが優しさに感じ、何も言わず抱いてくれている敦賀さんが私の全てを包んでくれているようで、涙が溢れた。

私は久々に声をあげて泣いた。


母が事故で亡くなった時も
飛鷹くんが入院になった時も
どんな時も
涙は出ても、私はやってきた。


ひとしきり泣いて落ち着いてきた私を、ベンチに座らせ手を握ってくれた。
その手がとても温かくて…心まで温かくなる。

握り合った手を見ながら、私は今までの事をポツリポツリと話し出した。


「飛鷹くんはたった1人の家族なんです。
もともと父親はいないく、母も仕事でいつもいない生活で。
2年前に……母が事故で亡くなりました。まだ飛鷹くんは10歳だったのに…。
私は高校にはいかず、働き出しました。
ささやかな暮らしでも、平和で慌ただしい毎日で。
5歳下の弟がいてくれて、何度母に感謝したか……。
1ヵ月前…調子が悪かった飛鷹くんに病気が見つかって、このままだと移植が必要かもしれないと医師に言われたんです。
子供の移植は日本では施行例が少ないし、もし海外となると……。
とにかく、お金が必要だと思いました。
飛鷹くんには満足な治療を受けさせたい。
そのためなら、どんな事もしようと決めたんです」


静かに最後まで聞いていてくれた彼が、また優しく私を包み込む。

「そんな大きな事を、たった1人で抱え込んでいたのか…」

私に絡まる腕の力が次第に強くなる。

「もし…海外で移植となるなら、俺の両親に相談しよう。
きっと役に立てると思うよ」

ゆるんだ腕から身体を離す。

「そんな…そこまでして貰う訳にいきません。
そこまでして貰う理由もありません」

「理由なら、あるよ」

微笑む彼。

「俺は君が好きだ。もちろん女性として。
君の力になりたい。
君が頼る相手は俺であって欲しいと思ってるんだ」

「………そんなの…嘘です……。
敦賀さんみたいな人が、私なんかを……」

「嘘なんかじゃないよ。
俺は君と契約したあの日よりもずっと前から、君を好きなんだ。
君が弁当屋で働いている時からね。
あの日たまたま見かけた君が、他の男とホテルに入ろうとするのがどうしても嫌で…
だから止めたんだよ」

「だって…敦賀さん、お金で買った私を求めたこと1度もないじゃないですか」

「身体のことを言ってるのなら、いつだって求めていたよ。
でも、身体だけじゃダメだ。俺は君の心ごと欲しいんだから。
協力…させて?」

突然の告白に、私は驚いた。
彼の真剣な眼差し。それはとても嘘には見えない。
でも…本気なのだとしたら、なおさら彼の好意を利用するわけにはいかない。

「気持ちは嬉しいですが…「君は」

私の言葉を彼が遮る。

「弟の為にどんな事もすると、決めたんじゃなかったのか?」

「…………。
確かに、弟の為なら何だってしますよ。でも、敦賀さんの好意を利用するわけには…」

「卑怯なのは俺の方だ。
君の気持ちが手に入るなら何だって…君の弟のことだって、利用するよ。

ねえ最上さん、俺と契約をしよう。

俺は君の事情を利用する。君はそんな俺を利用する。

最上さんは、お金の事を何も心配しなくていい。誰もいない部屋を引き払って俺の部屋に来てれれば。
俺は君の近くで、いつも美味しい食事が食べられる。

どう?」


彼の申し出は、いつでもおいしい。
本当は彼の気持ちが震えるほど嬉しかった。
彼はどんな時でも優しく、どんな時でも素敵な人だ。

ただ……今の私は恋愛なんてしてる余裕はない。

まずは、飛鷹くんが元気になることが最優先。
その為なら、何だってすると決めたのだ。


「……よろしく、お願いします」

そう言った途端、彼の神々しい笑顔と共に彼の唇が私の額に降ってきた。

「こちらこそよろしく。
これからは手加減せずにいくからね」

私は額を手で押さえ、真っ赤になりながらうろたえる。

「手加減…して下さい!
じゃないと私…死んじゃいます!」

「男とホテルに入ろうとした娘がなにをいまさら…。
いつか、俺もホテルへ誘ってもらえるように…頑張らないとね」

ニコリと笑う敦賀さん。
そんな彼からの愛情ダダ漏れ攻撃が、同居を始めた自分に降り注ぐのはまた少しあとのお話で。
それから先、飛鷹くんが元気になって、契約終了しても彼の気持ちがまだ私に向いてくれていた時は……

契約とは関係なく、彼と共に…いたいと思っていることは

彼にはまだ内緒です。








 **********




なんとも中途半端に終わらせてしまいました『契約』です。
もともとちょっと前の没ネタで、去る理由でやむなくUPした作品ですので……どうかご容赦ください(>_<)
本当はこの後の展開としてキョーコさん自覚編と完全ハッピーエンドも入れたい気もしたのですが…
そうするととてつもなく長ーくなってしまうので…。
どなたか…短編SSの書き方を教えて下さい……(T_T)









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2013.06.21 Fri l 契約 l コメント (4) トラックバック (0) l top
ストカ蓮さんの再来です。
そんなこと蓮さんはしないよ!と思う方はこのままUターンですよ!







最上さんが部屋に来てくれるようになって1ヶ月。

俺の心境は嬉しさ半分、忍耐半分……といったところか。

口説こうとしても、するりとかわされてしまう。
なかなか手強い強敵に、俺はいつになく悪戦苦闘していた。


今日は仕事がいつもより随分早く終わったから、彼女を迎えに行って一緒に食材とか買い物でも…と思っていた。
その姿を発見したのは、彼女に連絡すべくケータイを取り出したちょうどその時だった。

彼女だ。

部屋に来るいつもの時間にはまだ早い。
俺はケータイをしまい、声を掛けようと彼女の方へ向かった。

俺に気付く事なく颯爽と歩く彼女。
それを見て、俺の足が止まった。

彼女の表情に……俺はハッとした。


いつものような無表情でも、時折見せる可愛らしい笑顔でもなく、心から嬉しそうな表情。

それは、俺に向けられた事のない顔で。
言いようもない気持ちが胸を締め付ける。


俺は声を掛けずに彼女の後を追った。




本当はすぐに気が付いていた。


彼女は服が欲しいと言っていたが…
本当は服が欲しい訳ではないんだという事を。

彼女の装いは可愛らしいがいつも簡素で、とても今までのお金を注ぎ込んでいるようには見えない。

なぜ……毎日俺の部屋に通うほど、お金が必要なのか…。


俺はこのところその事を考えていた。
考えたところで答えなど出るわけもない。
なんとなくだが…彼女に本当の理由を聞いたら、部屋に来てくれなくなりそうで…
あえて触れずにいた。

後をつけるのは気が咎めるが、どうしても知りたかった。

彼女の全てを。



暫らくして着いた場所は、大きな白い建物。


そこは大きな総合病院だった。


その中に迷う事なく入って行く最上さん。

俺も見失わない程度の距離を保ってついて行く。

そして1つのドアの前に足を停め、ノックをしてその中へと消える。

……病室…?

ドアに近付いたその時、突然ドアが開いた。

「ちょっと待ってて?今、売店で買って来……
なっ!なんで敦賀さんがここに?」

勢いよく開いたドアの前で固まる2人。
流石にこの状態では何を言っても無駄というものだ。

「……………」

俺は何も言えず立ち尽くす。

「なに?そいつ誰だよ」

彼女の後ろから聞こえた声の方を見ると、白い室内に似合わず活発そうな少年がベッドから足を垂らして座っていた。

「なっなんでもない!バイトの知り合い!
売店、行って来るね」

そそくさとその場から離れるべく彼女は俺の腕を掴んで歩き出した。

「……彼は…?」

ずんずんと歩く彼女に声を掛ける。

「……弟です」

こちらを見ることなく、尚も歩く彼女。

着いたのは中庭のような一画。
木々が並ぶそこで彼女はクルリとこちらを向いた。

「なんでこんな所にいるんですか!」

「お金が必要なのは、彼の為?」

俺は彼女の質問に答える事なく、質問を返す。

「……そう…です!
飛鷹くんには…弟にはその事、秘密にして下さい!」

真剣な眼差しで詰め寄る彼女を、俺はゆっくり抱き締めた。




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2013.06.18 Tue l 契約 l コメント (4) トラックバック (0) l top


「君の今後、俺が買うよ」

今日初めて会った男は、事もあろうかおかしな契約を持ち掛けてきた。

「今後…ですか?」

「そう、今後。
毎日の予定なら、毎日。時々なら、時々。
それは君の自由でいい」

私は彼の言葉を黙って聞いた。

「俺と専属契約してくれるのなら、専属料も上乗せするよ」

「専属契約?」

「そう、俺以外と契約しない約束」

正直、この申し出は私にとっておいしい。
怪しいくらい……。


が、どんな事でもすると決めたのだ。

専属契約料も上乗せしてくれるというのなら、否やはない。

「わかりました。
でも…大丈夫ですか?
私、毎日…の予定ですが」

フワリと微笑む彼。

「心配いらないよ」

そんな彼の微笑みに思わず顔が熱くなる。

「名前…聞くのはルール違反?」

「いえ、最上…キョーコです」

「俺は蓮、敦賀蓮。
よろしくね、最上さん」



そうして私達の契約は成立した。


私は毎日、ここに通い始めた。

初めは流石に怪しんでいた私も、
本当に料理をして、一緒に食事をして、ゆっくりティータイムして、お金を貰い、送ってもらう、それの繰り返しだった。


まあね、あの容姿なら女性は選り取り見取りでしょうし…。
あえてわざわざお金を出してまで女を買う必要などないのだろうと思う。
しかも私のような貧相な身体の女なんて…。

私は食後のコーヒーを口に運び、彼をチラッと見ながら言葉を発した。

「敦賀さんは身体目的でもないのに、なんで私を買ったんですか?」

ちょうど料理とか作ってくれるような人が欲しかっただけなのではないだろうか?
だとしたらちゃんとした家政婦を雇えば、1日数万円の私と契約するよりはるかに安いはず。
敦賀さんにちゃんと進言してあげた方がいいんじゃないかしら…。

そう思っての問いかけだったのに……。

「……………。
最上さんがお望みなら、今からでも寝室に…連れて行こうか?」

話しかけに無表情になった彼が、急に夜の帝王の如く妖しく笑った。

「!!!!!!」

結構です!結構です!結構です!と叫びそうになるのをグッとこらえる。
そうだ…私は金で買われた女。

すると彼がクスクスと笑いだした。

も…もしかして……!

「からかったんですか?」

私は顔を赤くしながら声を荒げる。

「いや?からかってなんかいないよ?」

ニコニコと美貌の彼は言った。


プレイボーイ!

きっとそうやって世の女性を落としているのだろう。
冗談なのか本気の言葉なのかは知らないが、私の反応で遊んでいるのも確かだ。
親切心から家政婦を雇うという選択肢があることを教えようと思っていたけど、やめた!

プイッと顔を背け、コーヒーを飲み干した。



いつものように敦賀さんに送ってもらい帰って来た部屋。
シーンとするその部屋に1人、私は立ち尽くす。


「静か……。
あいつがいないと、こんなに静かな部屋になるなんて……。
淋しいよ……早く、帰って来てよ……」


とめどなく流れる涙をぬぐう事もせず、私は膝をかかえながら声を出さずに泣いた。







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2013.06.13 Thu l 契約 l コメント (2) トラックバック (0) l top

俺がこの娘に初めて会ったのは数ヵ月前だった。

仕事帰りに通りがかった弁当屋で、もう遅い時間だというのに元気に働く姿をたまたま見かけた。
その姿に吸い寄せられるように弁当屋に入り、特段食べたかった訳でもない弁当をその娘に頼んだ。
その時の笑顔が忘れられなくて…。
たまにその弁当屋を通ってはその娘を目で追っていた。
部屋に帰って、これではストーカーのようではないか…と苦笑したのはつい最近だ。


毎日のようにいた明るい笑顔のその娘が、急に姿を消したのは一昨日の事。

一昨日その娘に会えなくて内心少しガッカリし、昨日も姿がないのを確認した時は弁当屋を辞めてしまったのかもしれないと落胆した。


接点のないその娘にはもう会えないのだろうと思いながら歩いていた視線の先に、その娘を見つけた時は神に感謝をした。

いつもなら弁当屋で働いている時間なのに、彼女は駅の前で1人佇んでいた。
彼女に会えた嬉しさから、自分の顔が綻ぶのがわかる。
この機を逃したらもう会えないだろう。

……ここで声を掛けたらナンパのようではないか?というか、もう完全にナンパか…。

そんな考えに彼女へと歩んでいた足が止まったところで、彼女に中年の男が声を掛けたんだ。

知り合いなのかと思ったが、彼女の表情は固い。
2人で歩いて行く方向が怪しくて、嫌な考えが頭を支配する。


派手な外観がいかにもなホテルに入ろうとした時、俺は思わず彼女の腕をとり阻止していた。


「……また、誰か探さなくちゃ…」

そう言った彼女は、俺が腕を離したらまた今度は違う男とホテルに行こうとしてしまう。
どうしても…そんな事して欲しくなかったんだ。


その男から奪う形で彼女を俺の部屋に連れて来た。

もちろん彼女をどうにかしてしまおうと……思わない事はない。
だが、ここでその誘惑に流されれば、俺という存在が彼女の中でさっきの男と同じになってしまう。

そんなのは嫌だ。

彼女に触れる時はちゃんと彼女の心も伴って触れたい。


俺はなけなしの理性を総動員して彼女をキッチンに案内した。


「な……なんですか?この冷蔵庫の中身は!」

冷蔵庫を開けた瞬間、彼女はわなわなと強い口調で俺に詰(なじ)る。

「そ…そういえば、冷蔵庫にはビールと水しか入ってなかった…かな?」

「これでどうやって料理をするんですか!
だいたい!こんなものしか入ってないなんて、どんな食生活をしてるんですか!」

……………。

「買い物…行って来ます…」

俺はマンション下のスーパーに向かうべくエレベーターに乗り込んだ。

……彼女との初めてのまともな会話が…説教か……。

そう溜め息をついたが、彼女が自分の部屋にいる事実が買い物する足を浮足立たせた。



彼女の料理は、本当に美味しかった。
食事や食べ物にはまるで無頓着な俺が、何も言われずに完食したのは初めてだ。

「ごちそうさま。
すごく美味しかったよ」

「お粗末様でした。
喜んでもらえて良かったです」


食後にと彼女にコーヒーを渡した後、俺は本題を切り出した。

「さっきの男との契約はいくら?」

「………」

食事をして柔らかくなっていた彼女の顔から表情が無くなり、言葉の代わりに指を数本立てた。

俺はお尻のポケットから財布を出し、その中から数枚のお札を取り出してテーブルに置いた。
彼女はおずおずとソレを手にする。

「あの…枚数が多いですよ?」

「………君は、今後も今日みたいな事をするつもりでいるの?」

「そうですよ?」

真っ直ぐ俺の目を見据えて答える彼女。

「なら……」

そんな彼女に俺はズルイ契約をしよう。

「君の今後、俺が買うよ」

君に特別な感情を持っている俺が、『契約』という名の鎖で縛ってしまおう。




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2013.06.07 Fri l 契約 l コメント (2) トラックバック (0) l top
【契約】




「君がキョーコちゃん?」

キョーコは頷き、グッと唇を噛み締めた。

「カワイイねー。じゃあ早速行こうか」

キョーコは、少しお腹が出たサラリーマン風の中年男の後に黙ってついて行く。
着いた先は、派手な外観がいかにもなホテル。

その建物を見て、キョーコは少し怯んだ。
ここに入ればもう後戻りはできない。

「……早く、入りましょう」

前にいる男を、背中から促す。


今までの私、さようなら。


私は俯き、誰に言うでもない言葉が頭を過ぎた。


一歩一歩と進む2人。
派手な外観のその場所に入るべくドアが開かれようとした時、私は後ろから腕を掴まれた。

びっくりして、掴まれた方の手からバッグが落ちる。
振り返ると、そこにいたのは身長が見上げるほど高い美麗な顔立ちの…知らない男性。
私は声を出せず驚いていると、その男性の視線は私から前にいた中年男へと移る。

「俺の妹、どこに連れ込もうとしてんの?」

ギョッとした。
私に兄などいない。

『妹』という言葉に「チッ!」と舌打ちをし

「そいつが誘って来たんだよ!」

とだけ言うと、逃げるように去って行ってしまった。

あ…!

私はあっという間に見えなくなった後ろ姿を追おうとしたところで、掴まれていた腕に引き留められる。

「君さ…どう見ても高校生だよね?」

私の腕を離さずに語り掛けてきた男を睨む。

「どうしてくれるんです!逃げられちゃったじゃないですか!」

男の質問なんかに答えている暇はない。
またカモを探さなくては。

束縛されていた腕を乱暴に振り払い、落ちたバッグを拾うとパンパンと叩いた。

「……また、誰か探さなくちゃ…」

ぼそりと呟き歩き出そうとしたところで、また腕を掴まれた。

「……離して下さい」

「何でこんな事してるの?」

私は男を見上げ、クスリと笑った。

「……服が、欲しいんです」

「服…?」

眉間に皺を寄せる男の顔は、それでも美麗だ。

「助けなんて求めてません。余計な事しないで下さい」

「……金が欲しいのか…?」

「それ以外にこんな事する道理がありますか?」

掴まれた腕がより強い力を加えられる。

「……なら、俺が君を買ってやる」

そう言ったかと思うと急に歩き出し、腕を掴まれたままの私は引き摺られるようについて行った。




着いたのは高級そうなマンションの最上階。
ただ広いリビングに通されると、ソファに座るように促された。

「まずシャワーをお借りしたいんですけど」

ソファには座らず、そこにバッグを置く。
相手の男が変わっただけで、する事と受け取る物はどうせ一緒。

「いや、その必要はない」

男の返答に僅かに緊張する。

「じゃあ、寝室に行きましょう」

ゆっくりと男に近付く。

「その必要もない」



私は男を見上げた。

「俺は君を抱きたくて買ったわけじゃないんだ」

意味がわからず首を傾げる。
なら何のために私を買ったのか。

「そうだな、まだ晩ご飯食べてないし何か作ってくれたら…
さっきの男と同額、でどう?」

なんのつもりだろうか?
私を助けたつもりなのだろうか?

まあどんなつもりにせよ、お金が手に入るならどうでも良いのだ。

私は無言で頷き、キッチンに案内させた。



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2013.06.03 Mon l 契約 l コメント (2) トラックバック (0) l top
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