上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--.--.-- -- l スポンサー広告 l top


【C O B H ~後編~】


ある日家に帰ったら、最愛の人が消えていた。

何故だろう。

その日の朝、一緒に家を出る時もいつも通りで…。夜のご飯は何がいいかとか、笑い合いながら別れた。
前日の夜に彼女の心と身体を貪った後、珍しく彼女からの愛の言葉を貰ったばかりだったのに。

連絡が取れない。避けられているようで、外でも会う事ができない。
そんな状態が続いた3日目。

突然響いたのはエントランスのインターホンではなく、玄関のチャイムだった。
その相手を確認して、俺は勢いよくドアを開けた。


「……キョーコ!」

キャリーケース傍らに立つキョーコを、勢いのまま抱き締める。

「出てる間に、敦賀さんとの事をよく考えました。
3日間でようやく冷静になってきたので、お話し合いをしに来ました」

「…話し合い?」

すごく…嫌な予感しかしない。

「お邪魔しても…よろしいですか?」

「……キョーコと俺の家だろう?」

お邪魔しますと小さく呟き、リビングへと向かう彼女について行く。
そして、ソファに座るとクルリと辺りを見渡した。

「彼女さんが、まだ住んでなくて良かったです」

「は?」

何の話だ。

「…俺の彼女はキョーコだろう?」

「お胸の大きな彼女さんがいらっしゃるんでしょう?」

「え?」

「私みたいな貧相な胸じゃ申し訳ありませんから。
その方の大きな膨らみに抱(いだ)かれて、どうぞお幸せに」

そういえば先日、ドラマ撮影の合間に共演俳優達がそんな話をしていたのを思い出す。

「そう思って、この家を出たんですけど……」

彼等の質問に、いつもなら流すところを、その前日にキョーコから言われた言葉を思い出し、ついポロッと言ってしまった。
彼女の胸が「……ああ、うん。すごく、大きい」と。

「その『彼女』は、君の事だよ」

「はあ?!」

どこからかあの時のその話が、キョーコの耳に入ったのか。

「どこをどう見たら、この胸が大きいなんて言葉に繋がるんですか!
言い訳もそこまでくると、『苦しい』を通り越して笑えますね」

ハハハ…と力なく笑う。

「胸の大きな方が敦賀さんの彼女さんなら、私は2番目・3番目。
いえ、お決まりの家政婦の位置…なんでしょう?」

大きく息をついて、彼女は続ける。

「私の胸は魅力的だなんてリップ・サービスだったのも…
男性が、たわわな果実に惹かれてしまうのも、わかってました。
敦賀さんの『彼女』はそちらの豊作さんで、不作な私は元からかなうはずがないんです」

「俺から言わせれば…
他の女性に胸なんて、欠片も魅力を感じない。
ただの身体のパーツ。目や鼻、指や髪の毛のように身体の一部分、ただそれだけ。
でも、君は違う。俺にとってキョーコは、この世でたった一人存在する女性で。
他は女なんかじゃなく、ただの人だ」

どう説明すればこの気持ちが伝わるのだろうか。
俺にとって胸の大きさなど、なんの価値もないのだと。

「じゃあ…敦賀さんの言った『お胸の大きな彼女』は?」

「だから…何度も言うけど、キョーコだよ。
胸の話になった時、思い浮かんだのは君の事で。
前日、初めてキョーコが『世界で誰よりも愛してる』と。
そう、俺に言ってくれただろう?」

『この世界で、敦賀さんの事を誰よりも愛しているのは…多分わたしです』
いつもは受け身一択で、俺からの愛の言葉に頷くばかりだった彼女。
それが、情事の後、俺の頭を抱きかかえ、柔らかな胸を押しあてながら…そう囁いた。

「そりゃあ…言いましたけど……。
それと胸の大きさと、なんの関係があるんですか!」

「……その、世界で誰よりも俺のこと愛してるって言った言葉に偽りは?」

「ないです。だからこそ…
たとえ、敦賀さんの彼女が私じゃなくなっていたとしても、家政婦扱いされていたとしても。
出て行けと言われるまで、この家に居座ってやろうって思って…ここまで来ました」

左手で彼女の頬を撫でる。

「例えば、俺が俳優じゃなかったら…俺を嫌いになる?」

「へ?いえ?」

「じゃあ、この顔や身体じゃなかったら?」

「嬉しいです!」

想像以上の言葉と即答に、俺は微笑んだ。

「何で…嬉しいの?」

少し言い辛そうにしていた彼女が小さく答えた。

「敦賀さんが、とんでもないBメンなら…誰も貴方に魅入られたりしないじゃないですか。
そうすれば、私だけの………」

最後の方はモゴモゴと篭ってしまってよく聞こえなかった。



ああ、ほら……。

君より大きな胸(Heart)の女性などいないだろう?



俺はそっとキョーコの小さな身体を抱き締めた。


芸能人『敦賀蓮』でも、クー・ヒズリやジュリエナの息子でもない。

何もない、ただの男としての俺が良いと言ってくれる女性は


世界中探しても、きっと君だけだ。



横を向きふてくされた表情の彼女の頬に、キスをした。

「いつか死ぬ時は…」

彼女を抱き締める腕に、よりギュウッと力を込めた。

「君の思っているような大きな胸じゃなくて」

左頬を摺り寄せ、まるで心音を確認するように、俺は瞳を閉じる。
服の上からでも確かに聞こえる力強い音と、温かい感触に泣きたいような感覚になる。


「君のこの、大きな心の胸に抱かれて、死にたい」


そう言った俺に、キョーコは困惑しながら呟く。

「こんなひどい嫉妬だらけの……
心の狭い女にそんな事言うのは、きっと敦賀さんだけで……」


俺はその唇から次の言葉が出てこないように、長い長いキスをした。




題名【C O B H】は、アイルランドの街の名前ではありません。←コーヴという街が本当にあるっぽい。
Chest of big heart。そのまま【大きな心の胸】ですね。
多分この後、蓮さんはキョーコさんの胸の大きさについて嬉々と語ったんではないでしょうか。ご本人に。

蓮誕祭&一周年のアンケートのコメは無記名なのでお名前などはわかりませんが…
『成立後で、胸にコンプレックスのあるキョーコさんといさめる蓮さんのやり取りを』とリク投票&コメント下さった方。
思っていた内容とはもしかしたら離れてしまったかもしれないのですが、リクエスト本当にありがとうございました!



web拍手 by FC2

2014.10.08 Wed l 短編 l コメント (4) トラックバック (0) l top

コメント

胸と心。
誤解を招く表現でしたけど、そのあたりは海外育ちの外国人の感覚ならではなのでしょうね。

誤解が解けたのもヨカッタですが、キョコさんも「蓮さんから離れたくない」とハッキリ言えてヨカッタです!!

2014.10.08 Wed l 魔人. URL l 編集
なるほどね。
も〜蓮様、誤解されても仕方ないですよ(笑)
追い出されるまで居座ると宣言するきょこちゃん、いいですね‼︎
心が暖まりました(*^^*)
2014.10.08 Wed l ケロ. URL l 編集
魔人様
コメントありがとうございます♪

本当にそうだと思います。外国人だからこそ結びついた解釈。
今回は、出て行きはしたけどやっぱり…的な、蓮さんからしたら帰って来てくれるのも心が広い、という感じを出したかったんです。

ちょっと強引なお話になってしまいましたが、お付き合いありがとうございました♪
2014.10.09 Thu l 風鳥. URL l 編集
ケロ様
コメントありがとうございます♪

まさか、前日のキョーコさんの告白を思い出しニヤニヤ顔でつい言ってしまった言葉を、キョーコさんに聞かれてしまうなんて思ってなかったでしょうから…。
へんに訂正とかもせず流した話…だったんでしょうね。

な~んだ、なお話ですがお付き合いありがとうございました♪
2014.10.09 Thu l 風鳥. URL l 編集

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://kazetorinomawarimich.blog.fc2.com/tb.php/140-146e4b75
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。