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ヒズリ家の別荘は、真っ暗だった。
チャイムを鳴らしても応答はない。

帰って来てない?

私はゆっくり玄関のドアを引いてみた。
するとガチャっという音と共に扉が開いた。



お邪魔しま~す、と言いながら私は恐るおそる入って行った。
中は暗いが毎日通った家。すいすいとリビングへ向かう。

リビングのドアは開け放たれていて、やはりそこも明かりは灯っていなかった。

「ごめんね…」

部屋に入った私は、いつものソファに横柄に座る彼に小さく言った。
返事はない。
彼はタオルか何かで頭をゴシゴシと拭いている。

怒ってる……

「ごめんなさい。あんな事…言うなんて、どうかしてた…」

暗闇に慣れてはきたが、彼の表情までは見えない。

「あなたは正しい事を言ってたのに…」

ソファの下にはさっきまで彼が着ていたシャツがあった。
濡れてしまったそれを投げつけたのだと容易に想像できる。

「………………キョーコ、って呼んでた。アイツ」

「へ?…ああ、うん。私の名前」

そういえば……名前、教えてなかったかも。
私も、彼の名前…知らないや。

聞きたい…聞いてもいいのだろうか。

「俺、もう帰ろうかな…。日本は雨ばっかだし」

「え?だって!まだしばらくいるって…!」

急の了簡に狼狽えた。
どうして急にそんな事を言うの?
答えはわかっている。今日のアレで、私に嫌気が差したからだ。

「……なに?帰って欲しくないの?」

彼は立ち上がり、入り口に突っ立っていた私の方へと一歩一歩近付く。
暗い室内で、なお黒い大きな影が目の前で止まった。

「――!」

私は思わもわず顔を背けた。
上半身の、滑らかな肌が晒されている。
暗闇に馴れた瞳に映し出されたのは、獰猛な瞳の、この上なく美しい獣だった。

……ダメ、捕らわれちゃ。
私にはショー…ちゃんが……
………いないんだっけ…。

逸らした顔が強引に彼へと戻され、そのまま顎をすいグイッと持ち上げられる。

「誰かから…奪いたいなんて、思ったのは初めてだよ」

え?と思った時には、柔らかな感触が唇を塞いでいた。

柔らかい。それが第一印象で、私は目を閉じるのも忘れてただ立ち尽くしていた。

そして、一瞬だったのか、数秒あったのか、小さなリップ音と共にゆっくりと離れた彼と目が合う。
雨で濡れた私の髪を彼が優しく撫でた。

「さっき…、ショーちゃんから連絡があったの」

暫しの沈黙を破り、私は彼を見上げながら言った。

「ふーん」

急に不機嫌に、そっけない返事をする。

「話があるって」

「だろうね」

彼はいったん視線を窓に移し、またすぐに私へとその視線を戻した。

「いつ…会うの?」

「明日、私の仕事が終わったら」

「…………」

「…………」


長い沈黙。
彼も私も、瞳を逸らすこともできず、ひたすら時間だけが過ぎていった。


「明日さ、別れて来てくれたら…うんと慰めてあげる」

その沈黙を彼が破った。それは、落ち込む私をこの家から連れ出した時と同じ明るい声だった。

「え?」

「でも、別れないなら報告はいらない。
俺達は今日でお別れだ」

「そんな…」

「来てくれることを…願ってるよ……」

そう言って私の手をとると、彼は甲にゆっくりと口付けた。





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2015.01.27 Tue l 年下 l コメント (4) トラックバック (0) l top

コメント

キョコさんー!
ここは素直になれるといいのですけどーー!

しかし、この彼。うんと慰めてあげるが、エローーーく聞こえるのは魔人だけでしょうか?

(慰めてあげるというか彼の願望9割)←

続きも楽しみにしてます。

2015.01.27 Tue l 魔人. URL l 編集
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2015.01.27 Tue l . l 編集
魔人様
コメントありがとうございます♪

エローーーく聞こえるのは致し方ありません…
なんせ、かのお方はまだ十代のけもn…ゲフンゲフン

そうですね。たぶん、願望9割…いや、9割9分9厘が願望かと(^_^;)

いつもお付き合いありがとうございます♪
2015.01.28 Wed l 風鳥. URL l 編集
Re: 右に同じ
M 様

コメントありがとうございます♪

ウフフ…次回がその『慰め』になる予定です…予定では。
ただ、この『年下』の二人は私の用意しておいたレール通り歩いてくれないので…ね(泣)

ゆっくり進行ですが、お付き合い下さいね♪
2015.01.28 Wed l 風鳥. URL l 編集

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