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私は彼から逃げた。

と言っても、私が彼の所に行かないだけでほぼ私の生活から彼が消える。
もともと彼の所に押し掛けていたのは、私の方だったから。



窓の外を見ればギラギラと輝く太陽が大地を焦がそうとしている。

「いつの間にか7月も半ばを過ぎちゃった……。
ご飯…ちゃんと食べてるかなー」

いや!ダメだ。そんな心配は無用。

私は首を振りながらギュッと拳に力を入れた。


胸をえぐるようなこの痛みはなんなんだろうか。
物心つく頃から懸想人だったショーちゃんとの事でさえ、こんなに胸が痛むことはなかった。




あれから十日。

もう彼は母国へと帰ってしまっただろうか。



そんな感慨にふけながら、女将さんに頼まれたお使いに出ようと門をくぐった。
お気に入りの草履が前に出ようとするのを拒む。

「あ…」

『松乃園』の目の前の電信柱にもたれている彼がいた。

彼は私を見つけると組んでいた腕を解き、私の方へとゆっくり歩いて来る。
私は踵を返し、『松乃園』へ向き直る。
出てきたお客様にニコリと挨拶しながら、のれんをくぐろうとしたその時―――

「こら、ヤリ逃げ女」

「なっ――!」

彼の言葉に思わず振り向いた。

「純情な16歳の少年の気持ちを弄んで、ヤリ逃げしただろ?」

「ちょっ…やめて……!」

先ほどすれ違ったお客様が怪訝な顔で私達を見ている。

「ちょっとっ…ここでそんな話…!」

「訪ねても居留守つかわれるし…
ヤリ逃げじゃないなら何なの?」

「わかった!わかったから…ちょっと向こうで…」

私は彼の背中を押しながら、お隣さんの芝生を踏んだ。

彼が優雅に玄関のドアを開ける。
私はこっそり溜め息を吐きながらそれをくぐった。

「…ん!!」

途端に抱き締められ、キスをされた。

「お仕置きが必要だよね」

乱暴なほど強引なキスをされ、彼が私の鼻をつまんだ。
苦しくて開いた唇から彼の舌が入り込む。
抵抗しようにも大きな手が私を拘束していて動けない。

空気を求めて顔を反らそうとしてもすぐにまた塞がれ、許しを乞おうにも熱い口付けがそれを許さない。
私はただただその行為を受け止めるばかりだ。

次第に彼の刺激が私の身体へと侵食を始める。

あ…またこの感覚……。
すごく気持ちいい…。

思考や身体が麻痺したような感覚のせいで、重力に逆らえなくなる。
そんな私を抱き留め、やっと彼の口付けから解放された。

「…さて、『痛い』のと『辛い』の…どっちのお仕置きがいいかな?」

肩で息をする私に、彼は冷めた瞳で下問した。

「……え?」

『痛い』のと『辛い』の?
何のことだろうか。

困惑する私を柔く嘲笑し、彼は歩き出した。
付いた先は彼が普段使っている寝室で、私をベッドに少し乱暴に押し倒すと彼は私に跨がった。

「…なんで俺から逃げるの?」

紗綾形模様の着物の広衿に手を這わせる。

「『好き』って言ったのは、嘘だったの?」

偽りの黒い瞳が私を鋭く射抜く。

嘘だったと言うべきなのか、嘘じゃなかったと言うべきなのか、私にはわからない。

「……あなただって、遊びだって肯定してたじゃない」

「は?いつ…?」

「遊びはほどほどにしろよって言葉に、そうだな…って!」

「ああ…」

まるで些細な事とでもいうような返事にカチンとくる。
私の上から退いてもらおうと彼の身体を両手で押すがびくともしない。

「私は高校生のお遊びに付き合ってる暇はないの。
若女将は断ったわけだし、いつまでも『松乃園』に居る訳にもいかないでしょ?
早く新しい職と部屋を見つけないと…」

そんな私の言葉に、彼は小さく息を呑んだ。
それに気付かない私に、彼は半ば茫然と質す。

「アイツと別れたの、後悔…してる?」

「別に後悔なんて…してないよ」

ニコリとする顔がなんだか眩しい。


「そう?じゃあ――
俺とあっちで暮らそうか」


「………は?」

この話の流れと彼の提案(?)の意味がわからず、私は口を閉じるのも忘れ暫し渾然とした。






次回、最終話になります。


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2015.02.24 Tue l 年下 l コメント (4) トラックバック (0) l top

コメント

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2015.02.24 Tue l . l 編集
お怒りの16歳
嬉しい報告で、脳内にはお花畑計画がぽわん?

16歳だけど、実行力はありそうですよね。セレブですし。

このあとキョコさんはどうなるのか。

最終話も楽しみにしてまーす!
2015.02.24 Tue l 魔人sei. URL l 編集
C 様
コメントありがとうございます♪

嬉しいです!なんだか気恥ずかしいですが(*^_^*)

そういえば、私の所のクオンさんにしては今回珍しくヒドイ男じゃないですね。
『年下』も思ったより長くなってしまいましたが、少しでもお楽しみ頂けなら嬉しいな~と思います。
いつもお付き合いありがとうございます!

最後まで年下クオンくんを応援してあげて下さい♪
2015.02.26 Thu l 風鳥. URL l 編集
魔人様
コメントありがとうございます♪
どこに『純情』な『少年』がいるのかと、この部分を打ちながら呟いた私です。
そして、『ヤリ逃げ』もなにも、押し倒したのはお前の方だろ…と皆様を代表してツッコミもさせて頂きましたとも(^q^)

完全に彼の頭の中はお花畑全開ですね。
確かに超セレブなお坊ちゃんですもんね~。

フフフ♪あと一話、お付き合い下さい(*^_^*)
2015.02.26 Thu l 風鳥. URL l 編集

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