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「君が会ってくれない間、ずっと考えていたんだ。
どうやって、アメリカに君を連れ出そうかって」


「アメリカ?私を?」

「そう」

「何で私がアメリカに行かないといけないの」

「そりゃあ、結婚するため」

……………………え?何語?

言葉の意味が理解できず、ポカンと口が開く。
そんな私に、彼は顔を両手で挟んで満面の笑みを見せた後、軽くキスをした。


「俺と結婚して」


「え?……俺と、誰が?」

「もちろん、俺と君」

真剣な瞳。
『俺がいる』と言ってくれた時と同じ、優しい口調で。

「……ありがとう」

クスクスと笑いながら、私は返した。

この男(ひと)は本当に優しい。
長年懸想していた婚約者にはいつの間にか家族ができていた。
その男との未来が無くなった私を、彼なりに真剣に心配し慰めてくれている。

外見に騙されがちだが、彼はまだ16歳の少年。
『結婚』できなかった私への慰めが『結婚』とは、さすがに子供らしく短絡的だ。

「でも、心配はいらないよ?
これでも結構私、しぶといしどこでも生きていける自信はあるの。
…16歳のあなたがそんな風に励ましてくれなくても、私は大丈夫だよ」

「………こんな時ばかり、こども扱い?」

ギュウッと眉間にシワを寄せるこの姿は、ちゃんと少年に見える。

「……やっぱり、外堀から固めるか」

ボソリと呟いた彼は、徐ろにお尻ポケットからケータイを取り出した。

『………あ、母さん?仕事中?』

――なに?突然。

『母さん、娘が欲しいって言ってたでしょ?
連れて帰るから』

へ?

――何て言った?
何を連れて帰るって?

『…え?今すぐ飛行機に乗って帰って来い?今すぐは無理だよ。
彼女にも仕事の都合とかあるし。
近いうちに必ず連れて帰るよ』


待って…?落ち着いて、わたし。
頭の中を整理しよう。

「今、あなたは誰と会話してたの?」

「え?もちろん母だよ。ジュリエナ・ヒズリ」

「近いうち…どこに、誰を、連れて行くの?」

「俺の母国に、君を、連れて行くんだよ。
だから今日、旅館に辞める旨を伝えてね?できれば今月、遅くとも来月には一緒に帰るから」

ますます私の頭は混乱が広がる。

「…娘ってなに?」

「ああ。母さん、昔から娘も欲しいって公言してたからね」

「…私を養女に……?」

「はあ!?養女なんかにしちゃったら、俺と結婚できないだろ」

「まさか……本気?」

「最初から本気だけど」


極めて不快とでも言うような雰囲気で腕を組む。

「だって、何年も待たせてたら、キョーコはきっとすぐ誰かと結婚しちゃうだろう?
新しい場所で、新しい職場。大人な上司に、優しい同僚。
きっとすぐに交際申し込まれて、ほどなくプロポーズだ。今の俺みたいにね」

「そんなのあるわけ無いじゃない」

「じゃあ、アイツとアイツの両親が、何度もしつこく謝罪と結婚を迫ったら…
君はちゃんと断り切れる?」

「それはもちろん!…たぶん……ことわ…」

女将さんや板長さんが来ても…絶対…お断り…しちゃってもいいのかな…?
長いことお世話になってるのに?
恩を仇で返すの?

私の言葉の端が途切れたのを受けて、これ見よがしに大きく深い溜め息をついた。

「だから…置いて行くわけにはいかない。
本当は母さんの言う通り、今すぐ飛行機に押し込んで連れ去りたいくらいだ」

彼はそっと私の右手をとる。


「俺とアメリカに、来て…?」


仔犬のように項垂れる耳が見えるようだ。
その姿に、私は思わず肯いてしまった。

「――うん」

望まれる事は純粋に嬉しい。
まあ、住む場所も新しい仕事も探さなきゃならない身の上だし。

それに―――

彼は16歳。まだ高校生だ。
これから青春を楽しみ、大学生になる頃には素敵な恋人が他に幾らでもできるだろう。

それまで…どうせ短い間なのだろうから。



私は今までの感謝と共に、『松乃園』を出る事をその日のうちに女将さん達に伝えた。
熱心に引き止めてくれたけど、愚息のしでかした事がうしろめたいのか、渋々ながらも了承してくれた。



**********



「帰って来たら必ず顔出しなさいね」と優しく女将さんに送り出され、焦げるような熱さの残るこの大地を離れた。
左の窓からは雲の絨毯と青い空。そして、何も遮るものがないキラキラとした太陽が見える。

右に視線を移せば、彼がこの上ない笑顔で、肘掛けに置いた私の手に自分のそれを添えた。

「どんな結婚式になるかな?」

「へ?」

「帰ったらすぐ結婚式だ。きっと両親揃って大騒ぎでその準備を楽しんでるはず」

「気が早過ぎるんじゃない?
いつか、の話でしょ?」

「はあ?」

「だって、あなたまだ…「ク オ ン」

名前をちゃんと呼ぶよう強請られる。

「…クオンはまだ16歳でしょ?高校生じゃない。結婚は将来の話で…「キョーコ」

そこでまた彼は私の言葉を遮った。

「俺、16歳だけど、高校生じゃない」

「え?」

「飛んでるから大学生。あと二年もあれば卒業かな」

「飛んでる…?」

「うん。日本はあまり馴染みがないかもしれないけど、あっちは結構普通に飛び級があるんだ」

ニコリとし、彼の綺麗な碧の瞳が隠れる。

「それに、アメリカは親の許可があれば何歳でも結婚ができるから、俺の歳も関係ないし」

まあ、州にもよるんだけどね、と軽やかに話す。

「あとね――」

まだ、何かあるの?

「リックと去年から始めた事業がなかなか順調で、今の時点で取り敢えず年収100万$くらいはあるんだ。
その辺の心配はさせないから、安心してお嫁に来て?」

ひゃく…まん…ドル?

「早く着かないかな。楽しみだ、キョーコのウェディングドレス姿」


「―――まさか、本気……?」


以前にもこの言葉を彼に言った覚えがある。
その時に返ってきた言葉も――


「最初から本気だけど」


彼は私の手を強く握った。



『年下』って

怖い


この愚直なまでの思考と行動力はなんなの!?

誰か、飛行機(ここ)から出してーーー!!






9月から始まる新学年の前の、3ヶ月という長い休みを利用して来日した彼。
それが6月の中半のことで、アメリカへと連行されているのが8月の終わりという設定。
その短い時間での出来事のお話です。
それにしても、あちらの毎年3ヶ月夏休みって…長いっ!

さて、『年下』最後までお付き合い頂き、ありがとうございました<(_ _)>
皆様のクオンさんのお歳予想は当たりましたでしょうか?
途中開催させても頂きましたが、沢山のご投票、感謝いたします!!

そして、蓮誕祭&一周年アンケにて「蓮の年下話をお願いします!」というリクエストして頂いた匿名様。
蓮さんの年下のはずが、いつの間にやらクオンさんに…申し訳ござらん、です。
でも、少しでも楽しんで頂けるといいな~と思いながらカタカタしておりました。
リク後一年越しというなんとも遅いUPではありましたが…投票・リクをありがとうございました!


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2015.03.03 Tue l 年下 l コメント (10) トラックバック (0) l top

コメント

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2015.03.03 Tue l . l 編集
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2015.03.03 Tue l . l 編集
年下なクオンくん
年相応の性急さを見せながらも、行動力は大人レベル。

キョコさんは、あれよあれよという間に新婦になってそうですね!

ジュリさんとクーはもうはしゃぎまわってそう。(* ̄m ̄*)

楽しいお話を有難うございました!!
2015.03.03 Tue l 魔人sei. URL l 編集
No title
年下なおせおせ久遠くん、素敵でした!キョコたんは久遠やジュリ・クー夫妻にいっぱい愛され幸せにな日々を送るのでしょうね。どうもありがとうございました^^
2015.03.03 Tue l tese. URL l 編集
P 様
コメントありがとうございます♪
そして、いつもお付き合い下さいまして…嬉しいです!
こちらこそ、嬉しすぎるコメントを何度もリピさせて頂きましたよ♪
お陰ですごくヤル気を補充することができました。

年齢予想、実に惜しかったですね。でも、その辺の予想が妥当です。
年齢予想のアンケにもご参加、ありがとうございました。

確かに、16歳のワンコクオンはまた格別なものでしょうね(*^_^*)

『年下』、お付き合い下さいましてありがとうございました!!
2015.03.04 Wed l 風鳥. URL l 編集
K 様
コメントありがとうございます♪
そして『年下』のリクエスト、ありがとうございました!

蓮さんではなく、クオンさんの年下話になってしまったのに…ありがとうございます。
詳細設定など無かったので私が思うままに勝手に全てを決めてしまいましたが、そんなふうに言って頂けて安心しました。良かった~♪

この度は、蓮誕祭&一周年のアンケートにご参加、リクエストして頂き本当にありがとうございました<(_ _)>

2015.03.04 Wed l 風鳥. URL l 編集
魔人様
コメントいつもありがとうございます♪

私も彼のご両親の大はしゃぎぶりを妄想しながらカタカタしてました。
そして彼の高収入は、Face●ookの創立者の方々を模倣してみたり。

年下のクオンさんは理性も行動力も本当、無い感じになっちゃいましたね~(^_^;)
でもきっと、戸惑いながらも年上キョコさんが手綱をしっかり締めてくれる…ハズ?

何はともあれ、『年下』お付き合い、ありがとうございました!
2015.03.04 Wed l 風鳥. URL l 編集
tese 様
コメントありがとうございます♪

今回のクオンさん、終始押してまくりでしたね。
きっと、アメリカに着くやいなや教会に連行され、はしゃぐ夫妻の元、その日のうちに挙式。
…なんて事もあるかもしれません。

予定より少し長くなってしまいましたが、『年下』お付き合い下さいまして、ありがとうございました(*^_^*)
2015.03.04 Wed l 風鳥. URL l 編集
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2015.03.07 Sat l . l 編集
N 様
コメントありがとうございます♪

季節が反対のこの時期に、季節感が完全におかしいですね…(汗)
本当はUPするにあたり、季節を変えようと思ったんですけど…クオンさんの長期休みの都合上、断念せざるを得ませんでした。

たとえ年上大人なキョコさんでも、彼に翻弄されるのはデフォなんですね♪

最後までお付き合い、ありがとうございました!
2015.03.09 Mon l 風鳥. URL l 編集

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