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アメンバー記念すべき200人目のhoney様より、強奪させて頂きましたリクです。
『1:童話もので、風鳥さんの食指が動くもの。和でも洋でも・・
2:会社もので、ライバル会社同士でハニートラップを仕掛ける
といったような・・。』
どちらでも……ということで、どちらも捨て難い!と同時進行でいろんなお話を練っていました。

で、お披露目できそうになったものが『雪女』でしたので、こちらをUPします。
honey様、大変お待たせ致しました!

では、どうぞ……







「敦賀くん、一緒に山でも登り行こうよ」

貴島くんのそんな一言から、この物語は始まった。




【雪女】




彼からの誘いが実現したのは、まだ雪が深く残る寒い時期だった。

青空の下にそびえ広がる白い連峰に、野趣にとんだ雰囲気。

「圧巻だね」

それを見ながら、彼がほころぶ顔を隠すことなく言った。

「意外だったな。貴島くんが山登り好きなんて」

「俺も最近、山好きの人に教えて貰ったんだ。
一回知ったらやみつきだよ。山頂での気分は」

「そう?」

上機嫌で山頂目指し歩き出した。

刺すような寒さだが、歩いていると温かい。
俺達は軽快な足取りで登山を楽しんだ。

そして、数時間後に着いた山頂。

晴れ晴れとした空と澄んだ空気に、俺も気分が高揚した。
そこで長めに休憩し貴島くんと談笑したのち、下山することにした。


多分、後は帰るだけだと油断していたんだと思う。

あっ!と思った時には遅かった。

新雪で見辛くなっていた為に、脇の崖に足を踏み入れたらしい。

「敦賀くん!!」

貴島くんの伸ばされた手を掴む間もなく、俺は滑落した。



山で道に迷ったら、焦らずむやみに歩きまわるな。

昔、父さんが言っていた。
まずその場で休憩をとり、冷静さを取り戻したら、周りをよく見て地形を観察しなさい、と。

落ちた場所を登って戻るのは無理だ。
落ちて来た場所を見上げるが、相当落ちたらしい。貴島くんの姿どころか、崖の上が見えない。
ならば、貴島くんが助けを呼ぶのを待つのが賢明だ。

ふと、時計を見た。
14時を過ぎている。
日帰り登山は15時までに下山が基本だ。しかも今は冬。

俺は地図とコンパスを取り出した。
万が一にもここで夜を明かさないといけないなら、明るいうちに過ごせそうな場所を探さないといけない。
地形とそれを照らし合わせながら、俺は一点を目指し歩き出した。

さほど離れない場所に山小屋を見つけた俺は、中に入り火を点け、一息つく。

新雪の雪ぶとんのお陰で、何十メートルも落ちたのに無傷だった。
しかも、滑落先は山小屋の近く。
俺はラッキーだ。
体力にも自信はある。

大自然の懐で俺は、至って冷静だった。

チロチロと燃える囲炉裏の火に当たりながら窓の外を見れば、日はだいぶ傾き、雲行きも怪しくなってきた。
やがて日が落ち、風の音がヒュウヒュウと鳴りだす。
赤い炎の揺らめきを見ながら小屋にあった毛布に包まると、急に睡魔に襲われた。


ガタン!という音でハッと目が覚めた。
風の勢いで戸が開き、雪が舞い込んで来る。
そして、囲炉裏の火がフッと消えた。

「……外は吹雪か」

戸を閉めようと立ち上がったその時、荒れ狂う雪と人影が見えた。

「誰?」

そこに姿を現したのは、若く美しい女性。
白い肌、白い着物、凍ったような視線と表情だ。

え……雪女?

昔、日本語の勉強をする為に読んだ昔話のそれに似通う彼女を見て、咄嗟にそう思った。

確か、雪女に遭遇した親子は…
父親は白い息で死に、息子は助かるんだった……ような?
雪女がのちに家に来て、はたを織り出す…だっけ?

あまりに昔の記憶で、その内容も定かではない。

そんな思考に耽る間に、雪女は俺の方へと近付いて来る。
そして、目の前まで来ると、彼女はスッと俺の頬を指の甲で撫でた。

――冷たい。

逃げた方がいいのはわかっている。
だが、見惚れるような冷えた表情と瞳から、逃れられない。

俺は息をのむ彼女の美しさに、ピクリとも動けなかった。

そんな俺に彼女は微笑んだ。

「貴方を、助けてあげます」

彼女の声は鈴を鳴らしたように可愛らしかった。

「でも、誰にもこの事を話してはいけません。
今夜の事をもしも誰かに話したら、その時は、貴方の美しい命を頂きます」

そう言うと彼女は、降りしきる雪の中に消えた。

火こそ消えてはいたが、まるで何事も無かったかのように小屋の中は静まり返っている。
そして、あんなに荒れ狂っていた吹雪もピタリと止んで、凛とした空気が戸から入って来た。




それから、一年が経った。

俺は彼女の事を忘れられず、日々募る気持ちに溜め息をこぼしていた。

神秘的で、美しくも可愛らしい彼女。
冷えた瞳に、小さな愛らしい唇。

去り際になぜ引き止めて彼女の唇を奪ってしまわなかったのか、
あの白いうなじに舌を這わせなかったのかと、後悔ばかりが胸を締め付ける。

早く…早く…

俺は片手に持つ『雪女』の本に口付けを落とした。



ある大雨の日、仕事が終わり帰ると――
家の玄関の前に一人の女の人が立ってた。

それは、きっと来てくれる、そう信じてやまなかった待ち人たる彼女だった。

「雨で大変だっただろう?さあ、入って」

都会の喧騒の中、わざわざマンションの最上階まで来てくれた彼女。
俺は彼女の華奢な肩を抱きながら、満面の笑みで招いき入れた。




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2015.03.10 Tue l 短編 l コメント (10) トラックバック (0) l top

コメント

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2015.03.10 Tue l . l 編集
honeyです!
わぁ~嬉しい♪後半も楽しみです!
敦賀さんの冷静さがたまらないですねぇ~
昨日スライサーで指スライスして落ち込んでたのでより幸せなプレゼントです!!
2015.03.10 Tue l honey. URL l 編集
ちょっと怖いけれど、興味津々です。
こんばんわ。意外性が強くてついコメントを書かせていただいています。深夜に読んでいて、途中でゾクっときました。少し怖いですが、後半が楽しみです。当たり前だろう、と言われそうですが、キョーコちゃんが雪女??なんですね?残酷な言葉「あなたの美しい命を頂きます」はあまり普段のキョーコちゃんからは想像がつかないのですが、この後の展開に期待が高まりますね。更新を楽しみに致しております。ありがとうございました。
2015.03.11 Wed l genki. URL l 編集
Re: 雪女!
N 様

コメントありがとうございます♪

そうなんです!畏怖の存在であるはずの雪女さんの方が捕まった感(笑)

そして、現代風にしたので、大雨で助けを求めて訪ねて来る雪女さんを想像すると…なんともオマヌケな図になってしまいました。
2015.03.11 Wed l 風鳥. URL l 編集
honey 様
コメントありがとうございます♪

去年6月にリク強奪させて頂いてから、既に7ヶ月…大変お待たせ致しました!
実は他にも本当に色々な『童話』や『昔話』の蓮キョをしたためてはいるんです。
そして、『ハニートラップ』な蓮キョ!!すっごい惹かれます♪
まだお話を詰めきれてないので、いつかUPしたいな~なんて思ってます。

え゛…ご自分の指までスライスしちゃったんですか…!?
大丈夫ですか?
たまに私も爪スライスや指すりおろししちゃいます(汗)
お大事になさってくださいね。
2015.03.11 Wed l 風鳥. URL l 編集
genki 様
コメントありがとうございます♪

はい♪
名前を名乗る前に前編を終わらせちゃったのですが、雪女はキョーコさんです。

現代風にした為にギャグに走ろうとする彼等を止めようと敢えて淡々とお話を進めていたので、そんな流れでも『怖い』と言って頂き、ちょっと安心しました。
確かに、そのセリフはキョコさんぽくないですよね♪
でも、次回のキョコさんターンはいつもの彼女になる予定です。

どうぞ、お付き合い下さい♪
2015.03.11 Wed l 風鳥. URL l 編集
No title
なんと!
わーい、その他の童話たちのお話もハニートラップもとっても楽しみです!なんだかとても贅沢している気分。。!
年下はもちろん他の作品もじっくり笑楽しんでいたのであまり待っていた感じはしませんでしたよ~
風鳥さんがつむぐお話、これからも楽しみに待ってます!
2015.03.11 Wed l honey. URL l 編集
honey 様
その他の童話やハニートラップも、まだまだUPできるような状態ではないので…(汗)
いつかUPできればな~くらい感じですよ?

稀にすごくノッてる時があるのですが、ご存知の通りワタクシ超!遅筆なので(^_^;)

> 年下はもちろん他の作品もじっくり笑楽しんでいたのであまり待っていた感じはしませんでしたよ~

さすがスキビスキー様!先生により『待て』をよく調教されていますね♪
ありがとうございます。『雪女』お楽しみ下さい♪
2015.03.12 Thu l 風鳥. URL l 編集
うふふ
てっきり命をかけて呼び出したのかとおもいきや、コメ欄を拝見すると「大雨で助けを求めて訪ねて来る雪女さん」?

蓮狼さんが待ち構えているなんて知らずに、キョコさんったら!(爆)
続きも楽しみです。
2015.03.16 Mon l 魔人sei. URL l 編集
魔人様
コメントありがとうございます♪

ウフフ、今回はわりとストーリーに沿って進めて(?)いるので、キョコさんは本編通り「大雨で助けを求めて訪ねて来る雪女さん」です(*^_^*)
まさにその通り、蓮狼さんの懐へと、はからずも飛び込んでしまった憐れな子羊さんです♪
2015.03.17 Tue l 風鳥. URL l 編集

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