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解せない…

解せないわ……


押し掛けた私が言うのもなんだけど、なぜ彼はいともアッサリと私を家へ招き入れたのかしら…?

『大雨に難儀していたから』なんて使い古したスチャラカな理由、どう考えても納得はしないでしょう?
人混みと立ち並ぶ建物。雨宿りならどこでもできる。
わざわざオートロックを通り抜け、見知らぬ女が自分の家の玄関の前で待ち伏せして立っていたら、誰だって不審に思うでしょう?
普通なんの疑いもなく入れないでしょう?
……っていうか、私ならヒク。

私はそんな言葉を、前に歩く彼の背中に心の中で投げつける。

すぐにリビングに到着し、彼はソファに座るよう促した。

「名前は?」

「………キョーコです」

彼はキラキラと神々しい笑みを浮かべ、隣りに座った。

「キョーコ……外は大雨だし、ゆっくりしていくといいよ。
―――心ゆくまで、ね?」

なんて温かい人なんだろう。
見ず知らずの怪しい女を快く迎えてくれるなんて。

………でも、問題はこれからよ!キョーコ!!
どうやったら、お話通りにここに置いてもらえるか。
そして、あわよくば彼の妻となれるか。

私はそのとんでもない難題に、深い溜め息を吐いた。

容姿も十人並なら身体も貧相気味。
特技といえば料理と裁縫ができるくらいで。
どう考えても『妻』…いや、『恋人』すらなれそうな気がしない。

この一年、どんなに考えても答えどころか、解決の糸口さえ見付からなかった。
それなのに、大雨の勢いにのって押し掛けてしまったのだ。

瞑想(迷走)する私の視界に、急に美貌が映された。

「キョーコの声、聞きたいんだけど……」

「声…ですか……?」

近い!近い!

距離数およそ10cmの至近距離に、私はソファの背もたれへと後ずさる。
それにつられたように、彼も更に近付く。
背もたれに阻まれ、動けない私。
彼との距離が、多分3cmくらいとなってしまった。

ま…まつげ長っ!

「………ま、いっか。
これからたっぷり啼いてくれれば……」

「へ?」

その意味が理解できず、その場にそぐわない声をあげたところで―――

彼との距離はゼロとなった。

途端に鼻をくすぐる良い香り。
驚きで目を瞑った私の頬が大きな手で固定され、もう片方の手は後頭部に置かれていた。

「んっ…!?んん……!」

抵抗しようにも密着しすぎて動けない。
勢いよく触れた唇は、次第に深く、情熱的な口付けへと変化していった。

い…息…が……!!

限界を感じた瞬間、彼が唇を離した。同時に、私は息を大きく吸い込む。
そして、力なくそのままソファへとズルズル倒れこんでしまった。

「悪いけど…早急にでも君を妻にしたいから」

息が荒い私に、彼は少し悪い顔を滲ませ、覆い被さりながら柔らかい声で言った。

「避妊はしないよ…?」

なに?何事!?

もしかして、難題クリア?一年も悩んだのに…

え?!なんで?

どうしてこうなったの!!




**********




ふと、私はリビングのソファへ腰をおろした。

子供達がギャーギャーと走り回り、キッチンから今日の夕飯の温かい匂いが立ち込める。
もうすぐ彼が帰って来て、賑やかな食事となるだろう。
そして、彼は満面の笑みをたたえ言うんだ。

「美味しい」と。
「君の料理は世界一美味しい」そう言えば、子供達も「うん!!」と大きな声と笑顔を私に向ける。

私はそんな日常を思い浮かべ、重い溜め息をもらした。

いつ―――来るだろうか。

この幸せが終わる日。
彼が私の事を――『雪女』の話をする日は、いつ訪れるだろうか。
きっと、もうそう遠くない未来だと思う。

そして今日もいつもの様に、
『その日』は「今日ではなかった」と小さな安堵を胸に、彼の隣りで眠った。





そんなある日、針仕事をしているキョーコの横顔を見て、彼はふっと遠い日の事を思い出した。

「キョーコ…俺は以前に、君のように美しい女性を見た事があるんだ。
君と、そっくりだった。山で、遭難してね。
あれは間違いなく、雪女―――」

すると突然、キョーコが悲しそうに言った。

「あなた、とうとう話してしまいましたね?
あれほど約束したのに」

「キョーコ!?」

キョーコの服が、いつのまにか白い着物に変わっていた。
雪女であるキョーコは、あの夜の事を話されてしまい、もう人間でいる事ができない。

「あなたの事は、いつまでも忘れません。とても幸せでした。
子供達を、お願いします。
……では、さようなら」

そして、戸がバタンと開いて冷たい風が吹き込み、雪女の姿は消えた。



……という話になる予定なのに。

いつまでも彼は私に雪女の話をしない。

待てど暮らせどその日が訪れないまま、

月日は流れ、子どももすくすくと育ち、いつの間にやら年を取り、お互い仲の良いおじいさんおばあさんとなってしまった。





ある年の瀬、彼の命の火が消えようとしていた。

キョーコは彼の手を握る。

「キョーコ、今までありがとう」

弱々しいその手を握り返すと、彼は言った。

「初めて会った日、俺を生かしてくれた。
本当は、殺さないといけなかったのだろう?」

私は驚いた。

「………はい。でも」

いつまでも言わないから、もしかしたら気付いていないのか。
それとも、彼の中でとおの昔に忘れた出来事だったのかと思っていた。

「―――貴方に、ひと目で恋に落ちてしまったのです」

「俺もだ」

彼が微笑んだ。

「だから、君が訪ねて来てくれたとき、嬉しかったよ。
………どうしても君を失いたくなかったから、この話はしなかった」

キョーコの瞳から雫が落ち、頬に筋を残す。

「キョーコ、愛してるよ」




その日、彼は愛する人に看取られながら
人間にしては割りと長めな、その生涯を閉じ―――


『雪女』と『男』の物語は、しんしんと雪の降る日に終わった。





という事で、『雪女』でした!
本当は、最初のシーンで貴島さんと一緒に落ちて、彼は白い息を吹かれ蓮さんは生き残る…っていうお話のはずだったのですが。なんとなく止めました。
honey様、リクエストありがとうございました!!
私もとても楽しかったです♪



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2015.03.17 Tue l リク罠 l コメント (6) トラックバック (0) l top

コメント

蓮さんの計画
最期まで思い通りに進みましたね!
互いの望み通りの生涯を送れて何よりでした。

しかし、キョコさん。
1年も悩んだ末に押し掛けた先で、いきなり押し倒れるとはビックリでしたね。(爆)
2015.03.17 Tue l 魔人sei. URL l 編集
はううぅ
なんだか、最後の最後まで、緊張しました。
蓮さんの肝心なところの口の堅さに胸打たれます。やっぱり、手はでても黙ってるのが蓮さんですね。

あ、貴島さんを殺さないで頂いて、ありがとうございます(笑)
2015.03.17 Tue l moka. URL l 編集
魔人様
コメントありがとうございます♪

人間の蓮さんより雪女のキョコさんの方が、はるかに人間くさいという(笑)

蓮さんに捕まった憐れな雪女さんの物語(?)、お付き合いありがとうございました‼︎
2015.03.19 Thu l 風鳥. URL l 編集
moka 様
コメントありがとうございます♪

はい、正直に言います。
貴島さんに白い息を吹きかけられてるシーンをカタカタしながら、思い浮かべたのはmoka様の事です。
「……貴島さん殺したら、moka様から苦情くるかな…?」と(笑)

お手の早さは今までで最速かも…(苦)
でも、書いてる私はすごく楽しかったです。
最後までお付き合い、ありがとうございました♪
2015.03.19 Thu l 風鳥. URL l 編集
好きです
風鳥 様
こんにちは。
もう何回個のお話しを拝読させていただいたことでしょう。
大好きです。前編はクールビューティぽいキョーコ雪女なのに!後編では初めから「解せないわ・・」ですよ!雪女がですよ!もーキョーコちゃんそのもので、思わず笑みがでてしまいました。
しかし、最後にはホロリ・・生まれ変わってもう一度出会えるといいですね。
2015.10.08 Thu l ひろりん. URL l 編集
ひろりん様
コメントありがとうございます♪

わっ!とっても嬉しいです!!
雪女もキョコさんになると、クールビューティも鳴りを潜めてしまうんですよね~。
このところだいぶサボってしまっていて、士気も下がっていたので本当に嬉しかったです♪
2015.10.29 Thu l 風鳥. URL l 編集

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