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同級生がちょっと途中ではありますが……
アメンバー記念すべき200人目のhoney様より強奪させて頂きましたリク、第二弾です!

Cendrillon(サンドリヨン)とは、フランス語読みのシンデレラのことです。
【シンデレラ】の題名はもう既に使ってしまっていたので、【Cendrillon】に致しました。

……では、どうぞ。









一度くらい本物の王子様を見てみたい。

それは、オペラ座の人気男性歌手を見てみたいのと同じような感覚だった。



【Cendrillon】




灰色のかまどの側に座り、私はふと、灰をかき出す手を止めた。
手どころか腕や着ている服も灰まみれ。
だから、人はみな私の事をキョーコではなく、シンデレラと呼んだ。

でも、私には継母や義姉妹はいない。

私のお母様は忙しい人だが健在だし、お父様は物心がつく頃には既にいなかった。
もちろん義姉妹もいないから、私をいじめる人などこの家にはいやしない。

ならば何故、私はこんな事をしているのか、というと……


もちろん、私がしたいから。この一択だ。


誰よりも朝早く起きて朝食の用意と洗濯。
お母様が朝食を召し上がり、出仕に上がった後は―――
日がな薪を燃やし、灰をかき出し、その身を真っ白にしながら働いていた。

働く事は好き。
誰かの役にたてると、「ああ、私はここにいていいんだ」って思えるから。

だから、私に女一人でも生きていけるようにと勉学を勧めるお母様の目を盗んで、私は家事をするのが好きだった。
女ながらに我が伯爵家を盛り立てて下さっている忙しいお母様には内緒で。



ある日、私は我が伯爵家へ届いた招待状を握りしめていた。
母はこれを開くことなく捨てていらしたけど。


煌めくドレスに豪奢なお城と舞踏会。

な ん て ス テ キ!


社交界に興味は一欠片も無いけど、人生に一度くらいそんな経験してもバチは当たらないわよね?

現実は、魔法も魔女も、かぼちゃの馬車だってありはしない。
私は、クローゼットの奥から、唯一持つ夜会用のドレスを出した。
それは、一度は見てみたいと思い、せっせと自分で誂えた自分好みを体現したドレスだ。
そのドレスを身に着け、私はこっそり城へと向かった。
もちろん、茶菓子で買収した御者に、我が家の家紋無の馬車でこっそりと。

「雰囲気だけでも楽しめればいいんだけど……」

そんな軽い気持ちで行った私はどうかしてたんだと、後になって後悔することも知らずに。



優雅に流れるワルツに合わせ、色とりどりのドレスが揺れる。
その花々をエスコートする紳士。
まるで絵画の中の一コマだ。

私は壁伝いにその横を過ぎ、死角となった場所からバルコニーへと出た。
そして音楽がガラスで遮られたのを確認し、肘の上まであるレースのグローブに包まれた手で口元を押さえる。
うっかり気を抜くと鼻息が荒くなってしまう。

ヤバイ…萌え死んでしまいそう。

王子様はどこかしら?

血走りそうな瞳で今日のお目当てを皿のように探すが、それらしい人は見当たらない。

なんでも、我が国唯一人の王子で皇太子様は、キラキラのダイヤモンドキューティクルを誇る金色の髪にミスティックグリーンの瞳、春の陽だまりを思わせる穏やかなお方…らしい。
噂好きの鋳掛屋(いかけや)のおかみさんが教えてくれた。
王子様を一目見れば心を奪われ、その声を聞けば跪き命を差し出したくなるのだとかなんとか。

そんな噂の天上人を見てみたいウキウキと、ほんのちょっぴりのドキドキに胸を躍らせながら、私はまたホールへと戻りキョロキョロとしていた。


不意に誰かとぶつかる。

「失礼、マドモアゼル」

仰ぎ見れば、長身の紳士が心配そうに身体を屈めていた。

「…いえ。こちらこそ、失礼を致しました」

屈めた身体の影で彼の表情までわからないが、私は微笑み礼をした。

「ツレか誰か、探していたのかい?」

「あ…いいえ、あの……」

言い淀み、そしてその先の言葉が出てこない。
しばしの沈黙を作ってしまった。

すると目の前の紳士は口元を緩ませた。

「私と踊っていただけませんか?」

そう言って手を差し出される。
流れるようなその優雅な所作に見惚れそうになる。
が、急の申し出に戸惑った。

ああ、そうか。
すっかり忘れていたが、そういえば…男性は出会った女性をダンスに誘わないとマナー違反になってしまうんだっけ。

馴染まない社交界のしきたりを思い浮かべ、「私にそんな気遣いなんて必要ないのに」と心の中で呟きながら差し出された手に自分の手を添え、ニコリと笑った。

「はい、よろこんで」


正直、不安だ。
伯爵家の娘でありながら、私はダンスをきちんと習っていない。
なぜなら、「男を誘惑するような手段であるダンスなどしなくても良い」とのお母様の教えで。
でも、子供の頃から読んでいた物語に出てくる王子様やお姫様に憧れ、母の目を盗んで執事にこっそり教わっていた。
誰かと踊るなんて想定はしていないから、もちろん、我が家のホールで老齢の執事相手にお姫様気分を味わっていたわけだけれども。

ワルツの曲が緩やかに始まり、引かれて出たホールの真ん中で彼と向かい合う。
握られた右手に神経が集まってしまう。それを振り切るように、私は彼の左腕に手を添えた。
と同時に彼の手が私に肩甲骨に触れ、大きな手の平で抱き寄せられるように密着する。

やだ…どうしよう。

ドキドキと高鳴る胸の内を隠し、ステップに集中する。

すごい…この方。
お上手な方とのダンスは、羽が生えたかのように軽やかに踊れると聞いた事があるけど……本当だ。
あんなに執事の足を踏んづけていたというのに、ステップがし易い。ターンがし易い。他の方々と接触することもない。
なんて巧いリードなんだろう。

ダンス前の心配が杞憂に終わりそうでホッと一息漏れた時、耳のほんの近くから囁くような声にビクリとした。

「こっちを向いて?」

あ、しまった。
執事からもダンス中、よく「お嬢様、ダンス中は下を向いてはなりません」と怒られていた。

勢い良く見上げた先に彼の顔があり、目が合った。
私は思わず息を呑む。


豪奢なシャンデリアの光が彼の金の髪をキラキラと輝かせている。
この国には少し珍しい緑の瞳。すっと通った鼻筋。
驚くほど端正な顔立ちの男(ひと)が微笑んでいた。

わあ、王子様みたいにキラキラした人……。

出会った時から今まで、きちんと相手の顔を見ていなかった事に自分で驚いた。
身のこなしも優雅で、着ている正装の燕尾服は上等なものだとひと目でわかる。

きっと、上級貴族のご子息様なのだろう。

気持よく踊らせてくれるから、疲れることもない。
なんて楽しいんだろう。

私は微笑む彼に心からの笑みを返した。


気が付けば何曲も続けて彼と踊っていた。
連続で同じ人と何度も踊る、という事の意味もすっかり忘れて。


そして曲が終わると同時に彼に手を引かれ、バルコニーへと出た。
温まった身体に心地よい空気が冷やしてくれる。
楽しかった余韻に浸りながら、一つ息が漏れた。

すると、握られたままだった彼の手に力が込められ、自然と彼の方を向く。
彼は真剣な顔で言った。


「結婚して欲しい」


「え?」


その言葉と同時に、大きな鐘の音が鳴り響いた。



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2015.08.31 Mon l 短編 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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