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「結婚して欲しい」

「え?」

その言葉と同時に、大きな鐘の音が鳴り響いた。
12時を告げる音。



ケッコン?
―――ケッコンって、あの結婚?
この方は、何を言ってるのでしょうか?

え?最近の社交界は、挨拶に『求婚』も礼儀として組み込まれたの?
彼の瞳に、「なんちゃって~、冗談だよ♪」というような冗談の色は伺えない。

如何にも高級だとわかる身なりと所作、そしてこの美貌だ。
きっと彼は相当モテるだろう。
妻や恋人に、いや、一夜の相手だけでもと貴婦人が押し寄せる情景が思い浮かばれる。
そんな彼が、伯爵令嬢とは名ばかりで平々凡々な容姿の私に、「結婚して欲しい」?

世の中そんなうまい話がそうそう転がっているわけ無いという事は、いまどき下町の5歳児でも知っている。

……これはもしかして、アレか。


ドン・ファン的な放蕩者。
もしくは、結婚詐欺。


こわっ―――なんて恐ろしいところなの、社交界。
やっぱり、私には敷居が高過ぎる。
ここは早くずらかった方が良さそうだ。


私は鐘の音が響く中、身をひるがえしそのまま駆け出した。


「あっ…、君!」

呆気にとられていた彼が、脱兎の如く逃げ出した私を追いかけようとしている。

大変だ。あの長い脚で走られたら、それでなくても動き難い格好の私などあっという間に捕まってしまう。
そこに折よく、煌めくドレスのご令嬢達が、一人となった彼へと詰め寄った。
あっという間に囲まれた彼を一瞥して、私は外へと走った。

「社、彼女を追ってくれ…!」

遠く後ろの方で彼の声が聞こえた。
それを受け、社と呼ばれた男が慌てて追って来る。

走りづらいガラスの靴が片方脱げてしまった。
それを取ろうと振り返ると、メガネをかけた男性が迫っていた。

私はお気に入りだったガラスの靴を諦め、全速力で逃げた。

幸い、私は割りと足が速いし、体力もある方だ。



なんとか逃げられた~。

揺れる馬車の中、私は大きく息をつく。
暫らくし我が家へ着いた。

やっばいわー。なんて怖い所なんだ、社交界。
憧れの世界だったけど、実際はとんでもない所だった。
もう二度と行かなくていいや。

私はドレスを豪快に脱ぎ捨てた。



数日後、王家からの使者が我が家の門を叩いた。

「国王様からのお達しです」

「はあ…」

にこやかに話すのは、メガネをかけた男性。
どこかで会った事がある…?

「此の度、我が皇太子たる王子殿下が、ご結婚をお決めになられまして」

「王子様がご結婚されるんですか?おめでたいですね」

「はい。つきましては、先日の舞踏会にガラスの靴を履かれていた、然(さ)るご令嬢をお妃様にとお迎えする事になりました」

「ガラスの靴をはいていたご令嬢をお妃様に…そうなのですか」

ん?
なんだか聞いたことあるお話のような……。

「それで…そのご婚約者のご令嬢はどちらの?」

「それが…その麗しいご令嬢は、お名前も告げずに12時の鐘と共に走り去ってしまったのです」

………ちょっと待って?
12時の鐘と共に走り去った、ガラスの靴を履いたご令嬢?

「ですから私は王様からの勅命を受け、この残された靴の持ち主を探しに、こちらへ参りました。
我が国のご令嬢すべてに、この靴を試して頂きます」

そう言って差し出されたのは、上等な真紅のベルベットクッションに恭しくのせられたガラス製の靴だった。

何でだろう。すっごい見覚えのある靴だ。
先日置いて来るはめになった私の靴によく似ている。

それを私の方に差し出そうとした男性と目が合った。

……あっ、あの時の!
社と呼ばれ、私をしつこく追って来ていた人!


―――― ま さ か


「え!!あの方が王子様だったの?!」

不意に出てしまった私の言葉に、向かい合う人はメガネの奥にある瞳をキラリと光らせた。
そして私を椅子に座らせると、目の前に跪く。

冗談ではない。
もし本当に彼が王子様で、彼が探しているご令嬢が私なのだとしたら―――
この靴は私が置いて行った靴で―――

「失礼」

咄嗟に逃げようとした私の片足を持ち、すかさず透明な靴をそこに差し入れた。

目の前の使者が息をのむのがわかった。
彼の視線は私の足と、そこに収まるガラスの靴へと注がれている。
誂(あつら)えたように…いや、私の物なのだからピタリと合うのは当たり前だ。


なぜ私はあそこで、脱げたこの靴を全力で回収しなかったなのだろう。
その前に、なぜこんな脱げやすい靴を履いて行ってしまったのだろう。
そもそも、なぜ舞踏会など行ってしまったのだろう。

後悔がドッと押し寄せたその時、跪いていた男が勢い良く私の腕を掴みながら興奮した様子バッと立ち上がった。

「さあ、王子がお待ちです」




確かに、皇太子様は嫌味なくらい外見も社交も完璧で、貴族からだけでなく国民の支持も厚い。
立場に驕ることなく、騎士団長にも勝るとも劣らない剣技をお持ちだ。
きっと将来、良き王になるのだろう。
もちろんそんな皇太子様の隣りに並ぶのは、どこかの国の王女様か、はたまた国内屈指の名門貴族のご令嬢か。
どちらにしても、我が国の皇太子様はすこぶる優しいらしいし女性との派手な噂は皆無だから、きっと王太子妃となられた方を大事にすることだろう。

だけどね……!

だからといって、その女性になりたいなんて思ったことはない。


「私が皇太子様の妃?とんでもない話です!」

王宮へと揺れる馬車の中、真剣に辞退を訴えてもメガネの人はニコニコと笑顔だ。



王宮に着くと、腕を掴まれたまま引きずられるようにして宮殿内の真紅の絨毯を踏む。
重厚な扉が開かれ、表れた人物を見て、私は「マジだ…」と思わず呟いた。

窓から差し込む光に、彼の金色の髪が輝く。

「ああ、私のマドモアゼル。
待っていたよ」

夜の海を思わせる深い藍色のジャケットには華美な装飾が施され、腰には剣が佩いてある。
その剣の柄には王家の紋章を見た後、私は目の前まで来た彼に慌てて淑女の礼をとろうとし…阻まれた。

「もう絶対に離さないよ」

苦しいくらいの抱擁と、吐息とともに耳元で囁く。
そして、腕の力が緩んだ途端、王子様が私の顎をグイッと掴み、ギラギラとしたミスティックグリーンの瞳が近づいた。





【シンデレラ】って……なんともオソロシイお話だったんですね。
だってシンデレラは絶対、舞踏会に潜入した時、王子様をモノにしてやろうなんて思ってなかったはず。
もしこの時点でシンデレラがそんなこと本当に思っていて、ガラス靴を持ち迎えに来た時ガッツポーズしてたとしたら、大胆不敵を通り越して本物のおバ○さんなのかな?って思いますよ。
皇太子妃、ひいては王妃なんて…社交は出来ないとだし、国中から世継ぎのプレッシャー酷そうだし、王不在の時の代理するようだから政治に明るくないとだし、むやみに外出できないし。
確かに贅は尽くせるけど…ねえ?って思ってしまう私は、根っからの庶民なのでしょうね。

まあ、今回のリク『童話もので、風鳥さんの食指が動くもの。和でも洋でも・・』の【雪女】に続く第二弾をお送り致しました。
こんなふうに、ある物語になぞって蓮キョ風味にしていくのは、とても楽しいです!
次はどんなお話をイジってしまおうかなw





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2015.09.10 Thu l 短編 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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