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『Comfort 〜後編〜』



いまだ続く重苦しい空気。

肩を落とし座っている彼が、少し間をあけてから話しだした。

「前に…話した事があっただろう?好きな子の話」

「ああ……確か高校生の…」

彼の発した『好きな子』というフレーズに、私の胸がズキンと痛む。

「どうやら…その彼女に、最近好きな男ができたらしい」

そ…その好きな男って……敦賀さん、貴方のことではなくて?
だいたい貴方は本当に怖ろしい魔性の人ではないですか。
あんなに固く、強固に鍵を掛け、もう二度と恋はしないと心に決めた私の心にいとも簡単に入って来て…
どんなに抵抗しようとしても、私の心を侵食していく。

なんって怖ろしい人!

そんな敦賀さんに惑わされない女性が、この世の中にいるのか…。

「その相手って…君の事なんじゃないの?」

「……そう願いたいんだけど、彼女が言っていた好きな男と俺じゃ全然違うんだよ」

重い溜め息をつく敦賀さん。

この魔獣ともいえる敦賀さんに惑わされないつわものが…この世にいらっしゃるの?
芸能界一いい男が……まさかの…失恋?

「本人から聞いたの?」

「本人の口から、たまたまだけど…聞いてしまったんだ。
素っ気ない態度の無口なその男を、いつも間にか好きになってた…って」

敦賀さんは誰に対しても温和で紳士。素っ気ない態度なんて無縁の人だし、無口…なわけでもない。
……確かに、明らかに敦賀さんではない……。
敦賀さんの想い人の相手って……なんだか、今度私がやる役の男の子みたい…。

「そっか…その高校生の彼女、他に好きな人がいるんだ…」

このところの敦賀さんの隠しようのない落ち込みは、すなわち敦賀さんがその子を想う大きさ。
正直、そこまで敦賀さんに想われるその子が羨ましいと思う。

「元気だしなよ。
今は違う人が好きなその彼女も、君との仲を深めればすぐに落ちるんじゃないかい?」

途端に重ーーい溜め息。
そして、「そんな簡単にはいかない相手だ」と暗に言っている表情に、私も溜め息をついた。


「前は反対のこと言っちゃったけど
僕は…君のこと、好きだよ?」


私は坊なのをいいことに、普段なら言えない言葉を口にしてみた。


「僕が女の子なら…きっと君に、恋してしまうと……思うよ」


「……ありがとう、慰めてくれて」

憂いていた彼の表情が少し眩しい笑みになり、私も胸の中のしこりが軽くなった。

考えてみれば、私も失恋したのだ。
むしろ私も誰かに慰めてもらいたい…。


そんな中、カツカツという足音と共に聞こえた声が響いた。

「京子ちゃーん!あ、いたいた!
これから食事でも……あれ?敦賀さん!こんにちは!」


光さんの登場に……いや
光さんの言葉に……私はもちろんのこと、敦賀さんも固まった。

ギギギと首を動かし彼を見れば、すごい表情でこちらを向いた敦賀さん。
そして、おもむろに坊の頭を持ち、ゆっくりと持ち上げた。
私は抵抗する事もできず、固まったまま動けない。

やがて何の隔たりもない彼と目が合うことになる。


「敦賀さんと京子ちゃん、こんな所でどないしたんですか?」

その場に似つかわしくない声のトーン。
いっそこの重苦しい空気を感じない光さんが羨ましい……。

「……いや…最上さんと少し話し込んでいたんだよ」

光さんににこやかに返す敦賀さん。

「京子ちゃん、この後オフやろ?食事でもどうかなって…雄生や慎一も一緒に」

食事……行く行く!行きますよ!
この場から連れ出してくれるなら、なんだって!ええ、どこだって!

「悪いけど、最上さんのこれからの時間は俺が予約してるだ。
ね?最上さん?」

キラキラとした笑顔が……痛い。

「…は…はあ……」

「そうやったんですか…。じゃあ、今回は残念やけど、食事はまた今度ね京子ちゃん。
すみません敦賀さん、お話の途中で。失礼します」

ペコッと頭を下げ、とんでもない爆弾を投下したまま行ってしまった光さん。

「……私も…失礼し…」

その瞬間ガシッと腕を掴まれ、敦賀さんはケータイを取り出した。

「…あ、社さんすみません。
ちょっと急用で、今日のこれからの予定…調整して下さい。俺、このまま帰ります」

彼がそう言うと、受話口から悲鳴と共に「蓮…!ちょっと……待って…待ってくれ…!」と声が聞こえた。

「本当にすみません、でも…どうしても、お願いします」

ああ……社さんに後で胃薬差し入れよう……。

通話を切った敦賀さんは立ち上がると、私の腕を掴んだまま歩き出した。

着替えている間も彼はドアのあちら側に腕を組みながら背をつけ、歩いている最中も私の腕を束縛し、
無言で車に乗せると、自宅のドアを開け有無も言わさず中に招き入れた。


「さて…話をしようか、最上さん」

ひぃぃぃぃぃぃぃ‼
ついに、ついにこの時が……!

「鶏くんは、君だったんだね」

私は土下座をするべく正座をし、上半身を倒そうとしたところで止められた。

「怒ってるわけじゃないんだ。
ただ…恥ずかしくて」

それはそうだ。
後輩に恋バナやその他諸々を話していたのだから、敦賀さんにしたら恥ずかしいことこの上ないだろう。

「謀ろうと思っていたわけではないんです……。
本当にすみませんでした」

ジッと私を見据える敦賀さん。

「あの言葉は…本当?」

「あの…言葉、ですか?」

「君が女の子なら…俺に恋してしまうと思うって…言っただろ?」

「あれは!言葉の…綾ですっ」

「俺は…君が好きだ」

突然の言葉に、私の頭の中は真っ白だ。

「俺の事が好きだと言うのなら…
俺に恋人としてのポジションを与えて?」

懇願するような彼の言葉はとても嘘のだとは思えない。

「君の好きな…素っ気ない無口の男に、君を渡したくない」

…………私の好きな……素っ気ない無口の男?

……私が好きなのは、敦賀さん…貴方だけですが……
どこの世に私の好きな素っ気ない無口の男がいるのでしょうか?

…………いた。
今度私がやる、男の子の役が…素っ気ない態度で無口だわ…。


私はこの時やっと、敦賀さんが言っていた高校生が私で、好きな子には想う相手がいる事が頭の中で合致した。

先日、モー子さんと部室で話していた内容を思いだす。
そういえば…彼は「たまたま聞いてしまった」と言っていた。

もしかして……

私は思わずクスクスと笑いだした。

私のそんな様子に、敦賀さんはポカンとしている。

あの敦賀さんが…とか、嘘とか、冗談とか、そんな事も頭にかすらないくらい……
敦賀さんは表情は真剣で、
私の一言に限りなく落ち込み、
私の全てに翻弄される彼が…可愛く思えた。


可愛い可愛い彼に、私は坊で言ってしまった言葉を……
心を込めて送った。




「私が好きなのは…敦賀さんです」






**********





『一行お題』の「失恋を慰める」でした。
なんだかラストがスッキリ締まりませんでしたが…許して下さい(泣)
自分の文才の無さを、私も嘆いているところです。

魔人様、とりあえずこんな「失恋を慰める」でした〜。

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2013.06.28 Fri l リク罠 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

あはは!!
本当に怖ろしい魔性の人!
魔獣!

爆笑ワードに笑いが込み上げてしまいます。

ああ、楽しい!☆ヾ(≧▽≦)o))))

ラストへのお話のもっていきかたも、いいですね!!

ドボン有り難うございました!次回のウッカリドボンも楽しみにしてます。(予約等もありがとうございましたー!)
2013.07.01 Mon l 魔人. URL l 編集
魔人 様
コメント&予約など、ありがとうございました♪

最後がイマイチ締まりがないまま終わりにしてしまいました(泣)
でも、魔人様の所にヨダレものがたんわり罠張ってあるので…また懲りずに行きます!←断定

今回も、ありがとうございました♪
2013.07.02 Tue l 風鳥. URL l 編集

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