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いつもの時間の、いつもの場所で…
名も知らぬ彼女と同じ空間を過ごす小さな時間を、俺は毎日心待ちにしていた。



朝、俺は少し早めに家を出る。
目的は1つ、名も知らぬ彼女と同じ電車に乗るためだ。

彼女はいつも同じ車両のドアの前に立ち、ピンと背筋を伸ばし窓からの風景を見ている。
朝日に照らされたその姿は、俺の目には神々しく映った。

俺はこっそり見てるのがバレないように本を読むフリをして、いつも彼女の近くに居座っていた。

最初はさり気なく何故か目がいく程度だった。
いつの間にか、会えた日の景色は何故か輝き、会えない日はどんよりとした気分に何もする気になれない。
そんな自分に、初めて自分が恋をしているのだと気付いた。


いつもより混みあった車内。
その日の帰りは、その混みように正直辟易していた。

あ…あの子だ……。

混みあった人の群れの中から彼女が見えた時は、他人より頭一つ分高い身長に感謝した。
ラッキーだと思ったのも束の間、よく見ると顔色は悪く、いつも姿勢の良い彼女が身体を丸め俯き気味だ。
後ろのサラリーマン風の男が厭らしくニヤつき、グイグイと彼女に身体を寄せている。

まさか…彼女の身体を触ってるのか……
オイ嘘だろ?……俺がしたいと思っていたのに……

いやいや!

彼女に触れて欲しくない一心で彼女に向かった。


結果、俺は本当にラッキーだと思った。
お陰で彼女が『最上キョーコ』という名前なのだとわかった。
最初は会えば挨拶を交わす程度。少しずつ、でも確実に距離を詰めて…。
朝、彼女がいつもの時間に乗って来れば、真っ直ぐに俺の方に来てくれるまでになった。
朝日を浴びて煌めく彼女の笑顔は眩しく、奥ゆかしい程の彼女がニコリと微笑んでくれることがたまらなく嬉しい。


そんな彼女の隣りを、今日もしっかりキープする。
さして混んでもいない車両のドアの前で、彼女と外の風景を見ながら、でも時折互いに目を合わせ他愛もない言葉を交わし合う。
腕を回せばすっぽりと彼女の身体が収まるほどの距離で、その幸福感に酔いしれる。


不意に大きく揺れた車内。
「キャッ」という小さな声がし、彼女の体勢が崩れる。トンと俺の胸に彼女の身体が飛び込んで来た。

フワリと香る彼女の匂い。
支える為に瞬間的に抱き込んだ女性特有の柔らかさに、脳髄が溶けてしまいそうになる。

「す…すみません!」

途端に体勢を立て直し、真っ赤な顔で離れる彼女。

「いや」

すぐさま離れた彼女に俺は内心で舌打ちしながらドアに手を付き、彼女を俺の檻に閉じ込めた。
その行為に、彼女の顔がより赤くなる。

これは…痴漢ばかりを責められないな。

心の中で盛大に溜め息を吐き、このまま劣情に身を任せたい気持ちを追いやる。
この場に人目がある事に感謝をしながら。
そう、ここで劣情に任せてしまえば、先日の痴漢と同じ道を辿る事になる。
俺の存在は確実に彼女の中からdeleteされてしまうだろう。


幸せな時間とは早く過ぎてしまうもので、気が付けばもうお互いが降りる駅に着く。
目の前のドアが開き、流れる人混みに紛れながら彼女と改札に向かった。
改札をぬけるといつもそこで彼女とはお別れだ。

今日もいつものように彼女に「じゃ、また」と笑顔を交わそうとした、その直後。

「敦賀先輩」

後ろから声を掛けられた。
振り向くと、同じヒズリの制服を着た女の子だった。
俺のことを「先輩」と呼ぶのだからきっと後輩なのだろうが、知らない子だ。

「先輩、好きなんです。付き合って下さい!」

声を掛けて来た子は前置きもなく、お決まりの言葉を俺に向ける。
正直このての事は日常茶飯事で、その度に俺が言う言葉もお決まりだ。

「ごめん…俺、好きな子がいるんだ」

俺の隣りにその「好きな子」がいる。
こんな場面を間近で見られ、尚且つこの言葉を聞かれるのは恥ずかしいが
告白してきてくれた子には真摯に答えたい。
いつかその言葉を「好きな子」から「付き合ってる子」にしたいんだ。
そう思っていると、後輩の子が言葉を返した。

「知ってます……。
敦賀先輩と同じ生徒会の百瀬さんですよね?何度も百瀬さんと仲良さそうに話してる姿、見たことありますから」

……………は?百瀬さん?

「いや…あの……」

その言葉を訂正しようとしたが、後輩の子がその言葉を遮る。

「噂は知ってたんですが、気持ちを伝えたかったんです。すみませんでした」

ペコリとお辞儀をし、颯爽と走り去ってしまった。
茫然とした俺を現実に戻したのは彼女のだ。

「じゃあ、私はこれで…」

その言葉と共に、素早く彼女は通学路へと行ってしまう。





そして次の日、最上さんはいつもの時間のいつもの場所に来なかった。


その次の日も、次の日も。

電車の時間をずらしたり、帰りの時間も探したけれど

その日を最後に、彼女に会うことはできなかった。



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2013.09.10 Tue l 空の青 l コメント (4) トラックバック (0) l top

コメント

うふふ、蓮君がキョコさんを救えたのは
こういう訳だったのですね。(助けに行くまえに、少々本音が漏れていますが、そこも少年らしいですね)←大人蓮さんも常に漏れ漏れですけど

お似合いの男女が並んでいると、双方にそんな気がなくても噂になってしまうのですね。

まあ、あの人なら仕方が無いと思える存在だからこそ、噂になり、恋心を抱く者はそれを口にすることで自分を納得させるのでしょうけど。

キョコさんからすれば、失恋確定な上に、一緒にいちゃいけない相手になっちゃいましたね。

蓮君、どうするのでしょうか。

次回で終わりということは、なんとか誤解をとけるのでしょうけど。

青春味のお話が終わっちゃうのは寂しいですね。
2013.09.10 Tue l 魔人. URL l 編集
このお話大好きです☆
いつ続き出るのかなぁ?とウキウキしてました。
次回が最終回と知って淋しいですが、どんな風に蓮様がキョーコちゃんを捕まえるのかとっても楽しみにしてます☆
2013.09.10 Tue l 風月. URL l 編集
魔人 様
コメントありがとうございます♪

蓮さん側を書こうとすると、それはもう!とんでもない方向へ行こうとしてしまうので困ります。
そんな方面へ行くのを防ぐのが、このお話の一番難しいところです~(泣)

次回、逃げたキョコさんとどうなるか…お楽しみ下さい。
2013.09.11 Wed l 風鳥. URL l 編集
風月 様
コメントありがとうございます♪

そんなふうに言って頂けて、とても嬉しいです。
が、青春って難しくて…難しくて…うう。
先を全く考えてなかったお話なので、ありがちな内容しか思い浮かびませんー。

なので私のギリギリの最終回、お楽しみ頂けたら幸いです。
2013.09.11 Wed l 風鳥. URL l 編集

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