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「なんで…私が……」


【Bride】


どこまでも続く青い空に、透き通るような鐘の音が響いた。
白いチャペルの壁に鮮やかなステンドグラスの模様を映し、木製の椅子にはしっかりと盛装した人達がこちらをにこやかに見ている。
その真ん中を一歩一歩と足並みを揃えて歩き出した。
私の手を自分の腕に掛けさせリードして歩くのは、白いタキシードに身を包んだ長身の新郎だ。
やがてふくよかな牧師様の祭壇の前で立ち止まり、讃美歌の斉唱が始まる。

「……どうしよう…」

私は誰にも聞こえない声で呟いた。

聖書の朗読、祈祷が終わり、お決まりの台詞が牧師様から放たれる。

「新郎 敦賀蓮、あなたは新婦 最上キョーコが
病めるときも、健やかなるときも、これを愛し、これを敬い、
その命ある限り固く節操を守ることを誓いますか?」

「はい、誓います」

隣りから程よく低めの美声が穏やかに響いた。

一呼吸空いて、もちろん同じ質問をされる。
私の鼓動がドクドクと暴れ出す。

ああ…言わないとダメよね?!
ブーケを握る手に力を入れ、キッと牧師様の方を見て覚悟を決める。

「はい、誓います」


そしてお互い向き合い、牧師様から新郎に指輪が渡される。
新郎は私の左手をとり、決められたその指に環をスッと差し入れた。
続いて私にも、牧師様は銀色に光るそれを渡し、促す。
新郎の左手をとり、右手でそれを嵌めようと思うが…
思っていたよりも自分の手が震えているらしく、なかなか定まらない。

どうして私がこんなめに……

チラッと新郎の顔を見上げれば、ニコリと穏やかに微笑んでいる。

…こ…怖い。早くしろ、と笑顔で言われているように感じる。

すかさず下を向き、指輪を慎重に嵌めた。


ほどなくして牧師様が私達の手をとり、祈祷と祝福をした。
そして結婚の宣言をし、その後の言葉で私はピキーンと石化することになる。

「では、ここで誓いのキスを」

……………え゛!!

ベールを捲られ、何も隔たりのない新郎の顔が私の視界に飛び込む。

う…嘘でしょ?

私は思わず背を反らせ、右足が半歩下がろうとした時、新郎の左手が私の腰を抑え、右手が私の腕を掴まえた。
逃げ場を失った私は、ただただ近付く新郎を見るしかない。

口を一文字(いちもんじ)にし目を見開いたままの私に、新郎は呆気なく チュッ という小さな音をさせた。

ーーーーーーーーー。
い…今……唇に………。

新郎は私にニコリとするが、私は鯉のように口をパクパクすることしかできない。

そうこうしてる間に、式は滞りなく進んで行く。
讃美歌を斉唱し、誓約書に署名をすることになる。
書き終わった自分の名前は、手の震えでビックリするほど崩れていて、自分の名前だと判別し辛いくらいだ。
祈祷が終われば、晴れてこの挙式は終わりを迎え
参列者の祝福の元、退場となった。




教会隣りの控え室に通されドアが閉まった瞬間、私は新郎にまくし立てた。

「どうゆう事ですか!
撮影とかじゃないんですか?!
カメラなんてまわって無かったですよ!」

言い終わり、ハァハァと息がきれるほど興奮している私に、敦賀さんが笑顔で宥める。

「まあ落ち着いて?最上さん。
怒った顔も可愛いけど、せっかく純白のウェディングドレス姿なんだから笑顔の方がもっとよく似合うんじゃないかな」

「なら!今すぐどういう事だか、説明して下さい!」

「今日は結婚式だったんだ」

シレっと淡々と答える新郎。

「そうですね。先ほど執り行われましたよね」

「そう、君が花嫁。花婿は俺」

それは、私達の姿を見れば一目瞭然だ。
私は頷いた。

「そして、さっき君は神の御前で俺との永遠の愛を誓った」

「そ!それは!」

「誓約書にサインもしたよね?」

「………これは撮影か何かだったはずでは…」

「今日、君が来てくれて良かったよ。
来てくれなかったら俺は文字通り、花嫁に逃げられた花婿…だったよ」

心臓辺りがズキンと痛む。

もしかして…敦賀さんは、極秘に結婚するはずだった?

……そんなお相手がいたの?

お相手の花嫁が…来なかった、のかな。
だから今日急に、「今すぐ、某結婚式場◯◯チャーチまで来て欲しい」と電話して来たのか。

切羽詰まった様子の急の呼び出しに駆けつけた結婚式場。
着いた途端に、待っていました!という様子のプランナーらしき人に引っ張られ、あれよあれよと言う間に純白のドレス姿とメイクを施された。
そして、すぐに教会の前で待つ敦賀さんの所まで連れて来られ…冒頭へと続くわけだ。

言葉が出ない私に、敦賀さんはニコニコと笑顔を向ける。

「君との結婚式に、君が来てくれなくては話にならないからね」

今…君との……って言いました?

「来てくれて、ありがとう。
今日から君は、俺の奥さんだ」

「へ?」

「末長く、よろしくね」


………………………。

どこから突っ込んでいいのか…

どうしてこんな事になってしまったのか…


口を半開きにし、ただただ固まっている私に近付く敦賀さん。

そんな私に彼は、チュッとキスをして微笑んだ。





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2013.10.18 Fri l 短編 l コメント (4) トラックバック (0) l top

コメント

だまし?
お仕事だと思っていたキョコちゃんと 本当のウエディングだとおもっている蓮様。
「マジ」?
でしょうかね。
キョコちゃんに説明してあげてね、蓮様。
2013.10.18 Fri l 美音. URL l 編集
美音様
コメントありがとうございます♪

涼しい顔して全てをすっ飛ばし暴走する蓮さんと、餌食となる憐れなキョーコさんです。
これからきっと、蓮さんに丸め込まれながら流されるキョーコさんが目に浮かびます。
2013.10.18 Fri l 風鳥. URL l 編集
しびれをきらした蓮さん
周囲巻き込みでやらかしたのでしょうか。(笑)
呼ばれる名前は敦賀蓮でも、証明書はキッチリ、久遠って書いてそうですよね。

楽しいお話ありがとうございました!


2013.10.18 Fri l 魔人sei. URL l 編集
魔人様
コメントありがとうございます♪

キョーコさんは緊張とパニックで気が付かなかったのかもしれませんが…
多分、参列者の最前列にヒズリ夫妻が興奮していたと思います(笑)
2013.10.18 Fri l 風鳥. URL l 編集

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