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涼しい日が多くなってきた9月の終わり。
するりと頬を撫でる風が心地よい。


私は、さり気なく繋がれた手を見ていた。
その行為は、自分の手との大きさの違いを如実に語っていて、それだけで顔が熱くなる。
時折気遣うように私の歩調に合わせてくれる事が嬉しくて、どうしても顔の緩むのがとめられない。
気の利いた会話と、お洒落で雰囲気の良い食事。

どれもこれもとても非現実的で、まるで夢のようなひと時をくれる彼。


ただ会社で見つめていた時から思ってはいたが、本当に王子様のように見える。

……特にこんな笑顔をされると。

なんとも上品に食事を口に運びつつ、目が合った私に神々しい笑顔を惜しげもなくご披露するヒズリさんに、私はつい恥ずかしくなり顔を背けた。

「今日の映画のアクション良かったですね」

「そうだね。ラストも良かった」

食事の前に観た映画の興奮が醒めず、印象的だったシーンを思い出す。

「主演の女優さん、素敵でしたね!」

「うちに幾つかあの女優さんの主演映画のDVDあるよ。
明日は仕事休みだし、見に来る?」

「いいんですか?!」



翌日、迎えに来た彼に連れられて初めて訪れた『彼氏の部屋』。

通されたリビングのソファで並んでDVD鑑賞を始めた。
始めは近い距離と彼のリラックスした体制にドキドキしたが、気付けば話に引き込まれていた。

内容は、妖精の王子と人間の女の子が恋をする話だ。
偶然出会った二人が恋に落ち、最後は離れ離れになるという悲恋。

ロールが流れる頃には、私の頬を滝のような涙が流れていた。

「う゛う゛…。すみません、悲し過ぎて……」

恥ずかしい…。
ゴシゴシと目元を拭きながら鼻をすする。
そんな私に彼は小さく微笑み、優しく頭を撫でた。

彼の綺麗な碧色の瞳に、私の意識が吸い寄せられる。

頭を撫でていた手が頬を通り、頤をすくう。
碧色の瞳が閉じられた時、流れるようにそのまま唇が重なった。


私はその日、キスが甘いことと…
冷蔵庫の中身から、ヒズリさんの普段の食生活を知った。



**********



少し肌寒くなってきた10月の半ば。

ヒズリさんは「夜景が綺麗に見える場所があるんだ」と言って、食事の後にその場所へと連れて行ってくれた。
着いて私は息を飲んだ。

眼下に広がる星屑の煌めき。

「すごい……」

他にどんな言葉でこの感動を表せばいいのかわからなかった。

ただただ無言で、その宝石たちを見ていた。
そんな私の手をするりと繋ぎ、微笑んだ。

「気に入ってくれた?」

「はい!本当に綺麗で…」

潤む瞳で彼を見る。

「………なら、きっとクリスマス時期のイルミネーションも気に入ってくれるだろうね。
12月24日は○○ガーデンに行こうか」

言われた場所は、毎年その時期になるとニュースなどで取り沙汰される有名なイルミネーションの聖地。

「はい、今から楽しみですね」

握られた手に力を込めた。



**********



紅葉が色づき出した11月。

それは前触れなく、私に現実を突きつけた。


「今日は仕事、遅い時間までかかりそうなんだ…」

そう言って来たのは、昼休憩にベンチでお弁当を摂っていた時だった。
いつも私はここでランチをするのを知っていたヒズリさんが、缶コーヒーを持ってやって来たのだ。

「そうですか。お仕事、頑張って下さいね」

今日はヒズリさんの部屋で夕食をご馳走する約束だったが、仕事なら仕方がない。
目の前に差し出された缶コーヒーを素直に受け取り、プルタブを引き一口飲んだ。
私好みの甘めのそれは、以前「缶コーヒーならこれが好き」と言った事がある物。
そんな些細なことを覚えていてくれた事が嬉しかった。


仕事が定時で終わり、帰り支度をしていたら、
バッグの中に今日彼に返そうと思っていたDVDが目に入った。
今度の時でもいいかな?とは思ったものの、こういう事は早めに済ませてしまいたい。
私は普段は行かない彼の働く部署へと向かった。


「クオンも必死だな」

不意に聞こえた「クオン」という名前に、意識が向いた。
通りがかった自販機が置いてある休憩所の手前で足が止まる。
そこにはいたのはヒズリさんの同僚二人で、ベンチに腰掛けていた。
缶を片手にブレイクタイムといったところのようだ。

立ち聞きなんて悪趣味だ。
DVDは後日返そう…。

私は踵を返し、帰ろうと歩き出した。
その時、後ろから聞こえた一言が私の足を停めさせた。
ゆっくり振り向いたその先で、先程の男達は会話を続けている。


え…?今……。


彼等からは死角となったその場所で…


私は知りたくなかった真実を、知ってしまった。



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2013.12.10 Tue l Ставка l コメント (4) トラックバック (0) l top

コメント

不穏・・・・
キョコさんの浮かれ気分が、急下降ですね。

何を知ってしまったのやら。(TωT)
2013.12.10 Tue l 魔人sei. URL l 編集
ちょっと……
なっなんですか~!!
季節を追う様な、流れる文章で読んでいたら突然不穏な感じに…
私も浮かれていました。キョーコちゃんの様に…
まさか、昼ドラの様な展開になっちゃうの⁈
久遠、信じたいです!!
2013.12.10 Tue l しゃけ. URL l 編集
魔人様
コメントありがとうございます♪

ここまではほんわかな感じでお届けしましたが…。
次回から、いつものマイワールドで進んでいく予定です。

12日午前8時に更新します~♪
2013.12.11 Wed l 風鳥. URL l 編集
しゃけ様
コメントありがとうございます♪

フフフ…書いているのは私ですよ?
このままでは終わらない…!というか、終わらせません(笑)
なんて…強気に言ってみたり(^-^;

次回12日午前8時に更新致します♪
2013.12.11 Wed l 風鳥. URL l 編集

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